厚生労働省保険局の原徳壽医療課長は10月25日、医療経済フォーラム・ジャパンの「第6回公開シンポジウム」で基調講演し、「日本では他国では病院で診ていない慢性患者を病院で受け入れ、医師や看護師を配置している」と述べ、多すぎる慢性期病床への医師の配置が、急性期医療の質の低下につながっているとの見方を示した。
原課長がこの日提示した資料によれば、日本の人口1,000人当たり病床数は14.1床で、ドイツの8.5床、フランスの7.5床、イギリスの3.9床、アメリカの3.2床を上回る一方、人口1,000人当たりの医師数は日本が2.0人(04年)で、各国に比べて少なかった。これに伴い、病床100床当たり医師数も、日本は14.3人(04年)と他の国を大幅に下回った=表=。
この点について原課長は、「非常に多い病床に医療スタッフが配置されるので、患者当たりの医師や看護師の数は少なくなる。特に医師の数は圧倒的に少ない」と分析した。
さらに「よその国では必ずしも病院で診ていない慢性患者を日本では病院で受け入れ、そういうところにも医師や看護師を配置している。そのひずみが急性期に来ている」と述べ、もともと少ない医師や看護師を医療必要度の低い慢性期の病床に配置していることが、急性期医療の医師不足に拍車をかけているとの見方を示した。
医療費についても「こういうところにも使われているので、本当の急性期に十分に回っていくとは思えない」と強調。日本の医療提供体制について「改善すべきは改善しなければならない」と述べ、今後、慢性期病床の合理化を進める必要性を示唆した。
原課長はまた、医療を構成する要素として▽質 ▽アクセス ▽コスト―の3つを挙げ、「これらが全て良い状態になることはあり得ないと言われている」と指摘した。その上で日本の医療の現状について、フリーアクセスと低コストを維持してきた結果、急性期病院における医師不足の深刻化などの形で質が低下し始めているとの認識を示した。
原課長は「質とアクセスの良い医療を今まで低コストでやってこられたのは、おそらく医療従事者のボランティア精神に支えられてきたため」とする一方、「もう限界に近づいているのではないか。そのほころびがさまざまなところに出ている。特に急性期の医療は保っていけない」と述べ、3要素のどれを重視するかは国民の選択に委ねる考えを示した。
更新:2007/10/26 キャリアブレイン
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