ここから本文エリア 現在位置:asahi.com>BOOK>書評>[評者]香山リカ> 記事 書評 オサマ・ビン・ラディン 発言 [編]ブルース・ローレンス[掲載]2006年09月24日 ■雄弁と論理の結末が暴力か オサマ・ビンラディンは、発言するテロリストとして知られている。同時多発テロの後、アメリカが国威を賭けて彼を追うようになってからも、テレビやインターネットを通してメッセージを発し続けている。しかし、その発言について欧米メディアは、「さらなるテロを予告した」等、とくに攻撃的な部分のみを要約して報道するだけだ。 本書は、94年から10年間にわたるビンラディンの声明、説教、インタビューを集め、なるべく全文をそのまま採録したものだ。 驚くべき発見がいくつもある。まず、その雄弁さと話の論理性。博学と言えるほどの知識に加え、メディアの特性についても正確に把握している。そして、時に自作の詩を詠むなど、聞く者を思わず引き込む語り口の文学性。 ただ唯一にして最大の問題は、その結実が暴力ということだろう。 ビンラディンは、自分のやっていることはあくまで欧米がムスリム社会へ行ってきたことへの報復なのだ、と繰り返す。「彼らがわれらの女性や罪のない人を殺すかぎり、われらも彼らの女性と罪のない人を殺す」。“純化された正義”は暴走するしかないのだろうか。考えるべきことの多い問題の書。
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