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朴大統領、拉致を黙認 金大中事件 韓国が報告書公表

2007年10月24日11時50分

 73年に東京で起きた金大中(キム・デジュン)氏拉致事件の再調査を進めていた韓国の情報機関、国家情報院の真実究明委員会は24日、当時の情報機関・中央情報部(KCIA)による事件への組織的な関与を認める報告書を発表した。最大の焦点だった朴正熙(パク・チョンヒ)大統領(肩書はすべて当時)の指示については、決定づける証拠は見つからなかったものの、少なくとも暗黙の承認があったと判断した。

 韓国の政府機関が事件への関与を認めたのは初めて。委員会はこうした結論に基づき、韓国政府による金大中氏への謝罪が必要と主張。同時に日本政府に対しても、真相究明に努めなかったと指摘した。日本政府は韓国側からの謝罪と再発防止表明を待つ方針。

 報告書によれば、李厚洛(イ・フラク)KCIA部長が李哲熙・情報次長補らに拉致を指示した。在日大使館に勤務するKCIAの海外要員が「KT工作計画案」を作成。当時の事件現場のホテルから指紋が発見された金東雲(キム・ドンウン)1等書記官ら在日大使館のKCIA海外要員が犯行を担った。事件に関与したKCIA要員は24人にのぼるという。

 要員の一人は「当初、計画案には在日韓国人の暴力団幹部を使った金大中氏殺害案も含まれていた」と証言した。だが、日本警察の尾行や盗聴から殺害を断念。東京のホテル・グランドパレスから金大中氏を連れ出した段階で、単純な拉致計画が確定していたとした。

 朴大統領による犯行の指示については、様々な証言が交錯。当時、李厚洛氏による「私がやりたくてやるのだと思っているのか」という発言や、公使の「大統領の決裁をもらったので実行できる」との趣旨の発言も確認したが、指示を裏付ける明白な文書は発見できなかった。

 委員会は、大統領が事前に犯行を指示した可能性とともに、少なくとも暗黙の承認があったと判断した。

 委員会の調査は、強制力を伴わない面談形式で行われたが、証言に対する検証資料不足が目立った。李厚洛氏は健康状態の悪化で面談が実現しなかった。調査内容の大部分が李哲熙氏らの証言に頼っており、「調査には限界があった」とした。

 一方、73年11月と75年7月の2度にわたる日韓政治決着について、日本政府は韓国の公権力介入を十分に認識しながら、韓国の求めに応じて、外交的な事件解決に協力したとした。委員会は「両政府は事件の真相隠蔽(いんぺい)に対し、責任を免れることは難しい」としている。

 そのうえで、委員会は日本政府に対して「深い遺憾の意を表明する」とする一方で「韓国の公権力介入を認識しながら外交的な解決を試み、事件発生初期に真相究明ができなかった」と指摘した。

 宋旻淳(ソン・ミンスン)外交通商相は24日の記者会見で、報告書について「過去にこうしたことがあったことは遺憾だ」としたが、「官民(合同)委員会の調査結果が出たと認識している」とも語り、政府としての最終認定であると明言することは避けた。委員会は04年に設置された。報告書は87年の大韓航空機爆破事件など計7件について出された。

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