がん 50話

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第30話 子宮頸がんの予防戦略

 主な婦人科がんには、子宮の入り口部分である子宮頸(けい)部にできる子宮頸がんと子宮の奥(子宮体部)にできる子宮体がん、卵巣に発生する卵巣がんがあります。これらのがんの中で、早期発見・予防が可能であるのは子宮頸がんです。 このがんは世界的にみると、女性のがんでは2番目に多く、毎年50万人近くの女性に発症し、23万人を超える人の命を奪っています。わが国では子宮がん検診の整備により、年々死亡数は減ってきましたが、近年では毎年約5000人の方が亡くなられており、横ばいの傾向にあります。近年の研究から、発症の引き金はヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスであることが分かってきました。HPVは子宮頸がんの99%に認められ、性交渉により広まる性感染症の一つです。若年時の性交や複数の性的パートナーなどの危険因子がHPV感染と強く関係しています。若い女性のライフスタイルの変化から、子宮頸がんの罹患(りかん、病気にかかること)率の上昇、若年化が心配されています。

 このがんが発生してくる過程はよく分かっており、正常な粘膜から「異形成」という前がん状態を経て上皮内がん(0期)に進みますが、この時点までは病変は見てもわからず、症状も出ません。さらに進行すると、不正出血などの症状を伴う浸潤がんとなり、周囲に広がったり(浸潤)、他臓器にとんだり(転移)して治療が難しくなります。症状のない0期までに、遅くとも微小浸潤がん(Ia期)までに見つけることができれば、後遺症の残らない治療で完治できますし、子宮を温存して妊娠分娩(ぶんべん)も可能です。(大阪府立成人病センター婦人科主任部長、上浦祥司)

毎日新聞 2007年10月25日 大阪朝刊

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