◎全国学力テスト 気負わずに上位を目指そう
四十三年ぶりの全国学力テストの結果を見て、教育関係者のみならず、県民の多くがひ
とまず胸をなで下ろしたのではないか。石川県の学力レベルは全国平均より高く、知識の活用力を問われる中学の数学Bは全国三位に食い込んでいた。この詳細なデータは、学習指導を進めていくうえで、まさに「宝の山」となるだろう。
ただ、石川県の場合、北陸三県内での比較では、富山県や福井県に及ばなかった。小学
校の国語Bや算数Bでは、平均点が100点満点で3点も福井県に水を開けられている。石川県の授業以外の勉強時間が全国平均より低いことが原因の一端なのかという疑問もわく。
一度の試験で何が分かるのかという声もあるように、たかがテスト、されどテストであ
る。今回の結果をあれこれ深刻に考え過ぎず、さりとて浮かれることもなく、さらに上位を目指すために何をすべきか、あまり気負わずに考える機会にしたい。学校や保護者、地域が問題意識を共有し、学校教育の改善に一歩踏み出すことが重要なのではないか。
石川県教委は、文部科学省の通達に従って、市町別のデータを公表しないが、金沢市や
富山市、南砺市は公表する方針である。学校数が多いため、公表しやすい事情はあるにせよ、結果を市民全体で受け止め、現状に即した教育の実現を図ろうとする積極性は評価できる。
文科省や県教委などが市町別データの公開をいやがるのは、「学校間の序列化や過度の
競争を招く」からだというが、子どもたちには、高校、大学受験が待っている。実社会に出れば、もっと厳しい競争にさらされる。小さいうちは競争しなくてもよいという考え方は、決して子どもたちのプラスにならない。
私たちは、全国学力テストの正答率が公表された際、知識の活用力に優れた学校がどん
な指導法をしているのか、調査すべきと主張してきた。残念なことに、今回の発表には、それがなかった。綿密な調査が必要であり、かなりの時間もかかるだろうが、実績を上げている学習指導のノウハウは貴重である。高得点を上げた小中校を追跡調査し、優れた指導例を広く公表してこそ、経費と手間をかけて統一テストをした意味が生きてくる。
◎金大中事件公表 日韓のプラスにしたい
韓国政府の「過去事件の真相究明委員会」が、三十四年前の一九七三年夏に起きた、い
わゆる金大中事件の報告書を発表した。当時の野党指導者だった金大中氏(前大統領)を東京都内のホテルから拉致したのは韓国の中央情報部(KCIA)によるとしており、同国政府として初めてKCIAの犯行だったことを公式に認めたものである。要は、この公表を日韓関係のよりよい進展のプラス材料にすることである。
報告書そのものは、事件の大きなポイントであった当時の朴正熙大統領の関与について
、それを証明する直接的な根拠はないとしながらも、同大統領が指示した可能性は排除できないとしている。KCIAひいては大統領が主導した事件とみられてきたから、その点でこれまでの域を出ないものなのだが、政府として公式に認めた点は評価しなければならないものである。
ただ、日本側からみて、問題がないわけではない。それは報告書が、日韓両政府の政治
決着により事件の真相がうやむやにされたことについて、日本政府にも責任があるとしていることである。
日本からすると、とんでもない話である。金大中氏を拉致した現場から、在日韓国大使
館の一等書記官の指紋が検出されたにもかかわらず、朴政権が捜査に対する協力を拒否したばかりか、KCIAの関与を否定し、政治決着を求めたため、応じざるを得なかったというのが真実に近く、日本の捜査当局では長期未済事件とされているのだ。
真相究明委員会というのは、盧武鉉政権が打ち出した過去史基本法に基づくものであり
、これまでには日本のかつての統治に協力した人たちを批判し、その財産を取り上げてきた。そのため左寄りではないかとの批判が起き、バランスをとるように一九八七年の大韓航空機爆破事件についても調査し、北朝鮮の工作員による犯罪として金大中事件とともに公表した。これについては被害者の家族会から犯罪を予知しながら対策を怠ったのではないかとの厳しい批判が上がっているようだ。政府による真相究明にも限界があるのだが、民主政治の下でしかあり得ないとして受け入れたい。