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論説
食品偽装/社会的責任の自覚欠如
掲載日:2007-10-23 11:40:00

 ミートホープ、「白い恋人」、名古屋コーチン、「赤福」、そして比内地鶏。賞味期限の改ざんや食品表示の偽装が後を絶たない。これだけ続くと、誰もが手にとる食品一つ一つを「大丈夫か」と疑ってしまう。食べ物を買う際に、最も注意深く見るのは表示だ。その表示と異なる中身であれば、何を選択の基準にすればいいのか分からなくなる。価格競争など厳しい販売環境が背景にあるとしても、不正は食品全体への信頼を損なう。メーカーの、食品企業としての社会的な責任を、あらためて喚起したい。

 最近の一連の事件で共通しているのは、不正が長期間行われていたこと、匿名による通報がきっかけとなったことだ。比内地鶏を偽装した秋田県の食肉加工会社では、社長自身が「就任した10年ほど前に既に偽装が行われていた」と認めている。その時点で事実を公表すれば、まだ食品企業としての最低限のモラルがあったと言えるが、不正を隠ぺいし続けてしまった。経営者として失格といえる。

 しかし、「悪事千里を走る」だ。「赤福」でも比内地鶏の問題でも、内部精通者が公の機関に通報したことで不正が発覚した。多くの従業員が携わる食品製造では法令違反などを内々に処理したり、いつまでも隠ぺいしたりすることはまず不可能だ。昨年4月に公益通報者保護法が施行されたことで、内部告発や匿名通報は今後も増えることは間違いない。食品企業は、先例を教訓とする体質に早急に転換してもらいたい。

 食品の不正で怖いのは、問題を起こした企業だけで事が済まないことだ。ミートホープの問題が発生した時も、スーパーに陳列してある牛肉コロッケの売れ行きが一時落ちた。風評に惑わされる消費者が多いとは思わないが、さりとて同じような商品をわざわざ購入する消費者も少ない。万が一、長期化でもすれば生産・販売に与える影響は大きく、資本力の乏しい企業は事業の先行きさえ危うくなる。

 それにしても、食品にかかわる法令違反や不正がなぜ頻発するのか。バブル崩壊以降続く価格競争が、少なからず影響している。消費低迷の長期化の下で小売りは激しい価格競争を強いられている。そのあおりを受けて食品メーカーも、できるだけ安い原材料を仕入れ商品化することを迫られている。その結果、商品の「価値と価格」のバランスが失われ、「より安く価値のあるもの」が求められる。いわば異常ともいえる商品開発が起きているのだ。

 もちろん、厳しい消費環境の下でも懸命に企業努力を続けるメーカーもある。食品偽装はいかなる理由があろうと許されるわけではない。そう断った上で、食品に表示してある価格は商品価値を判断する一つの材料だと指摘したい。価格を軽視した商品には落とし穴があることを、消費する側もいま一度考えたい。

田園立国
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