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いじめ:動き始めた遺族 これ以上被害出さぬ 筑前いじめ自殺1年

他の遺族と共に、望ましい調査機関のあり方を考えるシンポジウムに参加した森美加さん(左)=神戸市長田区で6月3日、小松雄介撮影
他の遺族と共に、望ましい調査機関のあり方を考えるシンポジウムに参加した森美加さん(左)=神戸市長田区で6月3日、小松雄介撮影

 いじめや体罰を苦に自殺した子供の保護者らで作る「全国学校事故・事件を語る会」は昨年末から、自殺の原因を究明するための強い調査権限を持った第三者調査機関の設置や、遺族への速やかな情報公開を文部科学省に求めている。福岡県筑前町立三輪中の森啓祐君の母美加さん(37)も今年5月、他の遺族ら約70人と共に、調査制度の確立を求める要望書を同省に提出した。「これ以上、被害者も加害者も生まないために、何が出来なかったからこうなったかを、親や学校が知ることは大切」と考えるからだ。

 兵庫県川西市は、大学教授や弁護士らで作る第三者機関「子どもの人権オンブズパーソン」を独自に設けている。いじめなどの相談を受けて調査したり、学校に改善を勧告したりする。99年に中1男子がラグビー部の練習中に熱中症で死亡したときは、5カ月間にわたって関係者の事情聴取を重ね、市教委に指導方法の改善などを勧告した。だが、こうした自治体はごく一部にすぎない。

 文科省もようやく重い腰を上げ始めた。川西市を含め、いじめの相談窓口を設けるなどしている全国6自治体へ今年度から財政支援し、有効な対策を検討。担当者は「遺族が情報公開を訴えているのは承知しており、現状でいいとは思っていない。情報を集めている段階」と話す。

 教育評論家の尾木直樹・法政大教授は「事実を隠すことは、遺族の傷を上塗りする行為。加害者も自分の行為を認める機会を得られない。国は少なくとも自治体が参考にできるような(調査制度の)指針を早急に示すべきだ」と指摘する。

   ◇   ◇

 森君の自殺から1年がすぎた三輪中。同級生だった女子生徒(14)は「啓祐君のことはほとんど話題に上らない。『ニュースで今日やってたね』と話すくらい」と語る。だが、休み時間の教室には、以前に比べ、積極的に生徒の輪に入っていく教諭の姿が見られるという。「先生に話しやすくなった。前からこうだったら、啓祐君もいじめを相談できたかも」

 筑前町教委はいじめ防止を目的に、有識者らによる「子ども未来会議」を設置。いじめなどの相談施設開設を打ち出したが、具体化はこれから。被害者も加害者も生まないための道はまだ霧の中にある。(この連載は高橋咲子、阿部周一が担当しました)

 2007年10月9日

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