子どもの笑顔が新聞から消える―。最近、そんな気になる出来事がありました。
倉敷市で開かれたPTA広報紙づくり研修会を取材した記者の話。ある小学校では学校の方針で、PTA新聞に子どもの写真掲載を取りやめたというのです。紙面には先生らの写真だけ。運動会などの行事写真もなく、記者はがく然としたようです。
実際、子どもの写真掲載の許可を保護者から取る学校は増えているそうです。拒否の申し出がなかったにもかかわらず、保護者が猛抗議してきたという話も聞きました。
今夏、犯罪被害者の方が中学校で命の大切さを訴える授業を開いた時も、学校から「子どもの顔が写らないように」との申し入れがあり、翌日紙面に掲載された写真には生徒の後ろ姿が並びました。「先生は異様に思わないのか」。率直な感想です。
二〇〇三年五月の個人保護法一部施行以降、プライバシー保護の意識が高まりました。さらに夫のDV(ドメスティック・バイオレンス)から逃れてきた母子の所在地が新聞の写真で分かってしまうなど社会の複雑化も背景にあり、取材側も一定の配慮が必要です。
しかし法や条例に沿おうとするあまり、学校現場が過度に感情的になりすぎていると感じます。「個人情報保護は大切だと理解できるが、法の拡大解釈になっている」とある小学校長は苦悩を吐露していました。
幼い子どもが被害に遭う事件が多い昨今、暗くなりがちな紙面に明るい光を与えてくれる子どもの笑顔。被害者として掲載されるだけになるのは、あまりにもつらいと思うのですが…。(倉敷支社・斎藤章一朗)