十月も下旬に入り、クマ出没の危険期を迎えた。岡山県北東部、美作市などでは関係者が対策に頭を痛めている。
美作県民局勝英支局管内の目撃・痕跡情報は今年既に三十件以上を数える。その一カ所に行ってみた。民家のすぐ裏手が山で、あちこちに栗(くり)や柿の木がある。実を狙って現れたのだという。とはいえ街中に近く住宅が立ち並ぶ。「こんな人の多い所に」と驚いた。
お年寄りに尋ねると、昔は人家近くでクマを見ることはなかったという。奥山にすむクマと人を隔てる緩衝地帯だった里山が、近年荒れている。クマにすれば、最近は領分の外れまで来るといきなり人家がある感じなのだろう。
勝英支局などは今月、小中学校の先生らを集め初のクマ対処学習会を開いた。「大声はクマを刺激する。怖いけど静かに」「逃げると追いかけてくる。背中を見せずゆっくり後退」。出合った時の注意点を伝えた。
通学路も安全とは限らず先生らが知識を子どもたちに伝授する。支局森林課の職員は「クマの出没を普段から意識しておくことが大事」と話していた。クマよけの鈴が近く各学校に配られる予定だ。
以前、講演で作家C・W・ニコルさんが野生グマを絶滅させた英国と対比させ日本の自然の豊かさをほめていた。だが、過疎化の進行や生活の変化がクマとのすみ分けを難しくしている。地域の悩みは深い。