研究に対する考え方

 我々の医学研究は基本的に実験医学である。気力、体力が研究成果を左右する。もちん、知力もある程度必要だが、それは多くの部分が指導者に求められる。グループ内で研究を行っている以上、研究成果の善し悪しは教官によって左右されることはいうまでもない。他人のつまらない研究成果をみて、うちのグループにはこのようなみじめな研究成果を発表させたくはないとつくづく思うことがある。逆に、そう思わせるような研究を我々がしているのであればそれは、少なからず私の責任である。

 一方で、一段上の仕事、転機になるような仕事というのは、教官から生まれるのではなく、実際手を動かしている研究者から生まれることを多く経験している。一見つまらなそうに思えるテーマを教官から与えられたとしても、何かをつかもうとすると何かがつかめるものである。私が常にグループ内の研究者に訴える言葉は、"ポジティブでもネガティブでも結果をきちんと解析して次につながる何かをつかむこと"である。これらの過程を"やりきる"ことによって、我々の前にはかならず新しい道が開けてくる。

 初めて研究室の門をたたいたヒトは、何からはじめれば良いのかか分からないのは当然である。それは当然である。また、ある程度知識を持って入ってくる大学院生もいる。しかし、医学研究の教育を受けていないものは"自分は医学研究において素人なんだ"ということを忘れてはならない。素人であることはなんら恥ずかしいことでもないし、恥じることでもない。当たり前の事実なのである。それを素直に受け入れることが大切だ。そうすると、自然にコントロール実験とは何か、予備実験とは何か、実験の手法は正しいのか私や周りの先輩達に訊ねるはずだ。コントロール実験をおくことの意味が解っているだろうか?コントロール実験にもポジティブおよびネガティブコントロールがあることを知っているだろうか?その重要性が解っているだろうか?

 研究テーマに関して教官と話をして自分の興味ある分野と教室として進めている研究分野の融合をはからなくてはならない。同じ労力をかけるならより高いところを目指した目標を打ち立てるべきである。きっと、いつか、いつかもうすぐ、、、一歩高い所に昇んだという強い意志が我々には必要である。この想いを常に抱いて研究に、そして研究室の皆に接していきたい。
(旧ホームページから)