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専門医の初回・更新申請条件を厳格化
心臓血管外科医の専門医認定
専門医約500人が更新申請できない可能性も

2007.10.24

 心臓血管外科専門医の更新申請条件に、手術件数100例以上(更新期間5年間)が新たに規定されたことで、現在の心臓血管外科専門医の約500人が更新申請できない可能性が出ている。にもかかわらず、約7割の心臓血管外科医等がこの専門医制度の見直しを支持。これにより、心臓血管外科専門医は少数精鋭化され、将来的に施設の集約化も期待されている。その一方で、外科医志望者数の減少から若手医師確保対策も急務であるのが現状。専門医の質的アップや適正数の改革と、若手医師の確保をどう連動させていくのか注目される。

●「心臓血管外科専門医1000人時代」で質的アップ

 専門医の認定は、学会主導で行われている。一般的に外科系専門医の試験は、知識だけでなく経験症例数を規定するようになっている。また、医療事故の発生などに伴い日本内視鏡外科学会では、無編集手術ビデオによる技術認定を導入し、質に対する評価を導入している。

 一方、国内における心臓血管外科手術が年間5万症例であるのに対し、専門医の登録は1911人(2007年2月現在)で、医師1人当たりの年間症例数は約25症例。これは米国の胸部外科専門医の更新基準である年間100症例と比べても、「外科医の施術レベルの維持が可能かは心もとない」との意見があった。

 心臓血管外科専門医制度を改革する背景には、こうした経験症例数と専門医の数をめぐる問題があった。そこで心臓血管外科専門医機構では、国内の心臓血管外科専門医の初回申請条件として、「術者として50例以上、同一術式は10例を超えない」などと規定。また、更新申請条件には新たに「手術経験・術者又は指導者として100例以上(更新期間5年間)」を加えた。

 これにより、日本胸部外科学会専門医制度委員会のデータでは、約2000人の専門医会員のうち500人が更新条件を満たせない状況になるとしている。「心臓血管外科専門医1000人・時代」が、これまでの理想論から現実的なものとなってくる。

● 手術件数の規定に会員の過半数が賛同

 心臓血管外科専門医制度の改革は、文字通り「痛み」を伴う。日本胸部外科学会処遇改善委員会が実施した07年胸部外科医処遇アンケート調査では、心臓血管外科医974人に対して専門医取得の必要症例数について質問している。

 その結果、専門医の初回申請条件で20例が50例に変更されたことについては、「50例よりもっと多いほうがいい」との回答が31%、「50例という数はちょうどいい」としたのが49%で、全体の8割が「50例の必要症例数」を評価している実態が浮かび上がった。一方、「20例のままがよかった」との回答は8%、「50例より少ない症例数を希望している」のは3%だった。

 また、専門医取得の影響については、「特に影響なし」との回答が59%、専門医取得の見通しが遠のいたとみているのが25%、専門医取得が事実上消失が4%で、30%弱は専門医取得に影響を受けるとみている。

 さらに、今回の専門医制度の更新条件の変更については、手術数の基準があるほうがいいとしたのが66%に上り、手術数の基準なしのままがよかったとした14%を大きく上回った。

● 非更新組への対応求める声も根強く

 調査結果から、心臓血管外科専門医自身が、専門医制度そのものを知識と技術の両面から社会的評価に耐えられるものとするべきと考えている現状が浮き彫りになった。そこには、外科医の選別を容認していく意識の強さもうかがえる。

 また、専門医更新条件の厳格化で、シニア専門医の引退が促進される可能性が高い。その影響は、大学病院教授クラスや一般病院の病院長クラスまで波及していきかねない。彼らは、学会活動などでの社会的貢献や、病院経営などに軸足を移していくと考えられる。

 それだけに専門医の2段階専門医制度、例えば上級専門医、特定専門医、特別専門医など名称はさまざまだが、これまでの専門医としての実績に対して一定の評価をする形の専門医制度のへの要望は根強くある。

 一方、心臓血管外科専門医の認定修練施設の条件として、「心臓血管外科の年間手術症例数50例以上」も規定された。これにより施設集約化も進むとみられる。また今後、心臓血管外科専門医1000人時代に向かう場合、若手実働医の激減対策が必要となる。

● 呼吸器外科専門医制度も条件の厳格化へ

 一方、呼吸器外科専門医にも、手術経験数を初回申請条件・更新申請条件において心臓血管外科専門医と同様に厳格化した。専門医の初回申請条件では術者として50例以上、助手として100例以上。更新申請は手術5件を1単位とし20単位以上の手術件数などを規定している。これによって呼吸器外科専門医は、約1400人の専門医が1000人程度に集約していくとみられている。

 こうした学会の決定に対して日本呼吸器外科学会将来計画委員会は、今年8月に評議員に対してアンケート調査を実施。回答は226人(回答率61%)。専門医の更新制度で手術件数が導入されたことについて、仕方がないとした49%を含め、当然と受けとめているのが74%に上っていた。さらに、非更新の専門医に対して80%の評議員が対策が必要としている。



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