◇同意なく使用、違法--地裁判決
00年にぜんそくで府立医大病院(上京区)で治療を受けていた大阪府豊中市の女性(当時60歳)が敗血症で死亡したのは投薬ミスが原因などとして、遺族が府に総額約6000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が23日、京都地裁であった。池田光宏裁判長は「ぜんそくへの適用が未確立な薬を、患者や家族への十分な説明と同意を欠いたまま使用したのは違法」と述べ、説明義務違反と死亡との因果関係を認定。府に総額1230万円の支払いを命じた。
判決によると、女性は00年3月15日に入院してステロイド薬の投与を受けたが、重症で薬への抵抗性もできたとして、ぜんそくへの有効性が報告されていた免疫抑制剤を4月6日から投与された。女性は感染症が悪化して同23日に死亡した。
判決は免疫抑制剤投与について「直ちに違法ではない」としつつ、「ぜんそく治療薬として適用承認を受けたことはなく、重大な副作用が認められる。患者への具体的な説明と同意を欠けば、例え最善の選択肢だったとしても違法」と指摘。患者への説明項目として、(1)治療方法の具体的内容(2)有効性の評価(3)副作用の内容・程度と可能性(4)その治療方法の選択の有無による予後の見込み--を挙げた。
その上で、医師が、▽患者に説明せず同意を得なかった▽家族に一部同意を得ていたが、説明が不十分だった--と判断し、免疫抑制剤により感染症が悪化したと認めた。
府立医大病院は「主張が認められず残念」としている。【太田裕之】
毎日新聞 2007年10月24日