二〇〇四年十月二十三日に起きた新潟県中越地震から、きょうで三年になる。今年七月十六日の中越沖地震は三カ月を過ぎた。短い間隔で新潟県を襲った二つの地震は復旧が進むものの、住宅再建や地域再生など前途は険しい。
約十万棟の住宅が損壊した中越地震は、仮設住宅が年内に解消の見通しになるなど復旧はようやく最終段階に入っている。だが、復興住宅に入居し自宅再建にめどがたたない人も少なくない。
今春、避難指示が完全に解除された旧山古志村(現長岡市)は、地震前に住んでいた人の半分程度の約千人しか地元に戻っていない。集落再生は容易ではなかろう。
住宅被害が中越地震の約三分の一だった中越沖地震は、九月に仮設住宅の建設が完了した。家を失った被災者は落ち着きを取り戻しているが、被災家屋の再建などには時間がかかりそうだ。
中越沖地震では、中越地震を教訓にした被災者の早期ケアが功を奏した。中越地震では死者六十八人のうち、建物の倒壊など地震の直接的な影響で亡くなったのは十六人で、他はエコノミークラス症候群など災害関連死だった。これに対し中越沖地震の災害関連死はなかった。
地震後間もなく地元の医師グループが避難所を巡回健診して被災者に車中泊しないよう指導し、小まめな運動や水分補給を呼び掛けた。震災後のきめ細かい対応が被害拡大を食い止めたといえ、参考にすべき事例だろう。
地震などの被災世帯に現金を支給する被災者生活再建支援法の拡充を望む声は強い。現行では私有財産の住宅再建は対象外だが、自民、公明党の与党と民主党が対象を住宅再建にも広げる改正案をそれぞれまとめている。早急に結論をだす必要があろう。
耐震性不足の住宅改修も大きな課題である。国土交通省は全国の住宅耐震化率を〇三年の75%から一五年までに90%に引き上げる目標を掲げているが、対応の遅れた地域が目立つ。岡山県は〇五年度で67%どまりだ。
居住者の意識が低いうえ、財政難から国とは別に補助制度を設けていない市町村が多いためとされる。重要性が認識されるような啓発などが求められる。
地震はいつ起きるか分からない。プライバシー問題がネックになっている独居老人、障害者ら「災害弱者」の名簿作成や原発の耐震強化なども含め、幅広い対策を粘り強く進めていく努力が欠かせない。相次いだ地震の教訓を、どう生かしていくかが問われている。
中国共産党が第十七期中央委員会第一回総会(一中総会)を開き、二期目の胡錦濤指導部がスタートした。最高指導部である政治局常務委員会の若返りが進んだ。
常務委員に選出されたのは、胡・国家主席=党総書記ら現職五人と、五十代の習近平・上海市党委書記、李克強・遼寧省党委書記の二人を含めた新人四人だ。習、李両氏は、五年後のポスト胡時代を担うことになろう。
中国では歴代、最高指導者が後継者を指名してきた。胡氏も故小平氏にポスト江沢民時代の指導者として指名されていた。今回は二人を競い合わせることでトップとしての実力を判断するようだ。
胡新体制の今後五年間は、かじ取りに困難が予想される。中国は急速な経済成長によって国際的な影響力を高める一方、国内では貧富の格差拡大や環境の悪化、さらには官僚の不正など社会不安が深刻化している。
一中総会に先立つ第十七回党大会では、貧富の格差などを是正し、持続的安定成長を目指す「科学的発展観」を盛り込んだ党規約改正案を承認した。規約には「科学的発展観」を「経済、社会発展の重要な指導方針」と位置付け、戦略的思想として徹底していくと明記した。
江沢民前指導部の経済成長最優先路線からの軌道修正を明確に打ち出した。党の奮闘目標は「富強、民主、文明、調和の取れた社会主義近代化国家」と強調する。
胡指導部は、これまでも弱者への配慮など調和の取れた社会づくりを進めてきたが、効果が乏しかった。新体制でどこまで国内の安定が図れるか。失敗すれば、指導部に対する失望が広がり、政権基盤を揺るがそう。
(2007年10月23日掲載)