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フランス:移民家族にDNA検査法案 週内採決強行か

新移民法案に反対してデモ行進する移民とその支援者=パリ・ベルビル地区で20日、矢野純一撮影
新移民法案に反対してデモ行進する移民とその支援者=パリ・ベルビル地区で20日、矢野純一撮影

 【パリで矢野純一】フランス外国人・移民受入庁のジャン・ゴッドフロイド長官は毎日新聞などと会見し、仏国内の移民が家族を呼び寄せる際、DNA検査を実施する法案について「移民の家族が増え財政を圧迫している。働かない移民の家族は必要ない」と正当化した。同法案はナチスによる占領を想起させ、人権を無視しているとして反発が出ている。しかし移民対策を売り物にするサルコジ政権は今週にも採決を強行する構えだ。

 同長官は「フランスが必要としているのは労働者としての移民だ」とし、移民の家族が手厚い医療や教育サービスを利用している点に触れ「移民の家族が増えた結果、税金による費用負担が急増し、国家の財政を圧迫している」と話した。

 また長官は「ソマリアやエチオピアなど、家族関係を証明する戸籍制度が十分に整備されていない国がある。DNA検査の実施で、入国の承認期間を大幅に短縮させることができる」と移民側のメリットを強調。ただ、「移民の増加と犯罪の関係は立証されておらず、治安対策ではない」と述べ、05年秋に移民系の若者による暴動が起き社会不安を呼んだ問題とは直接関係ないと弁明した。25日に開催予定の上下両院合同会議で採決される。

 法案には、国内の移民が本国から家族を呼び寄せる▽家族との関係を戸籍などで証明できない--場合に、任意のDNA検査で血縁を証明する▽仏社会に同化させるため、仏語やフランス人としての義務や習慣を教育する、などの点が盛り込まれている。

 サルコジ大統領は、自身はハンガリー移民の子だが、今年の大統領選で保守色を強め、移民の流入が医療や教育費など国家財政を圧迫しているとして、移民規制を公約に掲げていた。

 一方、新移民法案に反対する市民団体が先週末に主催したデモ行進には市民ら数千人が参加した。デモを主催した市民団体幹部、アンソニー・ジャハンさん(45)は「DNA検査は人権を無視し、ナチスを思い出させる。自由や人権を重んじる、仏の理念に反しており、政府は移民を悪者に仕立て、経済悪化や失業問題の原因を移民のせいにしている」と批判した。

 仏国内の移民は04年には約490万人に上り、全人口の約8・1%にあたる。同長官によると、04~06年で年平均約20万人の移民が入国し、その半分が移民の妻や子供など家族の呼び寄せだという。

毎日新聞 2007年10月23日 15時00分

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