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ロシア劇場占拠事件、特殊部隊使用の秘密ガスの正体は?

2007.10.23 20:17
このニュースのトピックスロシア・CIS

 【モスクワ=内藤泰朗】ロシア・チェチェン共和国の独立派武装勢力が、モスクワの劇場を武力で占拠し人質の観客130人が犠牲となった事件から23日で5年。ロシア特殊部隊が人質救出作戦で使用し、「無力化ガス」と呼ばれた秘密ガスの主成分が欧米の専門家の調査でようやく明らかになった。その正体は、露保安当局が開発し、1滴で巨ゾウをも麻痺させる強力な麻薬性物質だ。

 ロシアの英字日刊紙モスクワ・タイムズによると、秘密のベールに包まれていたガスの主成分は、人工的に合成された麻薬成分の「カフェンタニル」。麻酔薬として知られるモルヒネの1万倍の効力をもち、ゾウなど大型動物の麻酔薬に使われる。

 武装勢力側は2002年10月23日、約900人の観客らを人質に劇場に立てこもり、チェチェン共和国からのロシア軍撤退を要求。聞き入れられなければ、人質もろとも劇場を爆破すると脅迫したが、ロシア側はこれを拒否。事件発生から56時間後の26日未明、ロシア特殊部隊が「無力化ガス」を劇場の通気口から噴霧し、人質と武装勢力を気絶させて突入した。

 救出作戦では、チェチェン人武装勢力42人のほか、人質の約15%に当たる130人が中毒死。うち10人は子供だった。解毒剤や救急車、医師が不足し意識不明の人質の支援、救急態勢の不備があったことから、ガスの使用を許可した当局の準備不足を批判し、調査を求める声が犠牲者の親類らからあがっている。

 26日には、モスクワ・ドゥブロフカにある劇場前で追悼集会が開かれるが、関係者らは「指導部は、反テロ戦争を盾に本当のことを明らかにはしない」とみる。プーチン政権は「無力化ガス」の使用が正当だったと主張し、同ガスの成分を公表していない。

 ただ、欧米の専門家は、事件でのロシア側の作戦が「狡猾(こうかつ)な離れ業だった」と評価し、劇場を「血の海」としなかったロシア当局の判断が正しかったとの見解を示している。

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