やまとうたは人の心を種としてよろづの言の葉とぞなれりける──日本の歌が人の心を種として、たくさんの言葉となって表れたように、言葉には人の思いが沁み込んでいる
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千鳥ヶ淵南の土手 先週20日の土曜日に、連れ合いと皇居の北にある北の丸公園に出かけた。
 皇居・乾門(いぬいもん)に面した東京国立近代美術館工芸館からイギリス大使館前に抜ける、千鳥ヶ淵の南の土手の上にある道を歩こうと思ったのだった。

 「へえ、こんなところに道があったのね・・・」
 予想したとおり、東京に生まれ育った連れ合いも、この土手の道は知らなかった。
 土手のすぐ下を走る代官町通りは、連れ合いも車で何度か通っている。でも、土手の上にある道の存在までは知らなかった・・・

 この道は300メートルほどの短い道だが、古木や大きな松の木もある林間の土の道で、右手に千鳥ヶ淵、左に吹上御苑の緑を眺めながら歩くことができる。
 千鳥ヶ淵の水面を首都高速が横切り、その向こうに千鳥ヶ淵緑道、北の丸公園の森が望め、とても都心とは思えないような不思議な景色が広がる。
 この日は、千鳥ヶ淵に白鷺が来ていた。

 北の丸公園を中心としたこの一帯は、皇居前広場から見ると皇居の裏手に当たり、実際、皇居見物に来る観光客はここまで足を伸ばさない。
 しかし、きれいに整備された広場が続く皇居外苑に比べ、吹上御苑に接し、森の自然に包まれた、都心で最も心安らぐ場所の一つではないかと思う。

 東京について話す時、大抵の人は東京を代表する場所として、銀座や浅草、あるいは東京タワーのある芝公園、北の玄関口・上野を挙げる。若い人なら、原宿や渋谷、青山、六本木といった華やかな街かもしれない。
 東京見物には外せない東京ディズニーランドは、残念ながら東京ではない・・・
 そういった中で、東京を象徴する場所の一つである皇居周辺は、私が好きな場所でもある。

 北の丸公園には、武道館を始め、科学技術館、近代美術館、公文書館があって、公園を素通りする人も多いが、広大な森の広がる緑地公園として、散策には絶好の場所である。
 大きな池に面して芝生も広がり、家族連れやカップルのピクニックにも最適、もちろん独りで時間を過ごすのも良い。

 私はこの3つとも経験している。若い頃に連れ合いとデートで来たこともあるし、子どもを連れて家族で遊びに来たこともある。最近は一人でぶらつくこともあるし、連れ合いと植物を見ながら森を歩くこともある。
 ここにはカップルや家族連れだけでなく、独りで過ごしている人も多い。都会の喧騒を逃れ、緑を眺めながら鳥の囀りを聴き、独り思索に耽ることのできる、意外と穴場なのかもしれない。

 さて、北の丸公園から千鳥ヶ淵の南側を抜けて内堀通りに出た私と連れ合いは、そこから左に折れた。ここから皇居・半蔵門までは、縦に長い千鳥ヶ淵公園となっている。
 武道館入口の田安門から千鳥ヶ淵緑道にかけては桜の名所として有名だが、この千鳥ヶ淵公園の桜並木も美しい。
 右にイギリス大使館、左に半蔵濠を挟んで吹上御苑を眺めながら、千鳥ヶ淵公園を皇居・半蔵門まで歩く。歩道には皇居一周のマラソンランナーが走っている。

 皇居・半蔵門まで来ると数人がカメラを抱えて立っている。中の二、三人は明らかに雑誌か新聞のカメラマンだった。
 詰所の警官の話では、これから皇太子妃が皇居から出てくるのだという。情報通の一般人のオジサンもいて、秋篠宮妃、皇太子妃の順に出てくるという。

 「お誕生日で来られています」と警官が言う。
 そういえば、朝刊に今日が皇后の73歳の誕生日だと書かれていた。後で知ったことだが、この日、皇太子家、秋篠宮家、そして福田首相を呼んでお祝いの昼食会が開かれていたのだそうだ。

 千鳥ヶ淵の土手を散歩するつもりで、たまたま半蔵門まで歩いてきたら、昼食会が終わって皇族が帰るところに出くわした。
 時計を見ると1時を過ぎたところだった。

 「折角だから、見て行こうか・・・」
 いや、見世物ではないので、見ていくは失礼である。昔なら不敬罪である。
 「お見送りをする方は、歩道の外側によってください」と警官は言った。
 そう、お見送りである・・・

 もっとも、警官はこうも言った。
 「内堀通りを左に曲がります。曲がる時に手を振られますので、いいですか・・・
  カメラをお持ちの方はそのときがシャッターチャンスですよ。
  ケータイがあれば、それで撮ってくださいね!」

 私の右隣にいたオバサンが、何事かと訊く。
 「美智子皇后のお誕生日で、
  お祝いにやってきた皇太子妃と秋篠宮妃がお帰りになるそうですよ」
と、私は情報通のオジサンに教えてもらったことを話した。

 「帰る時間も決まっているのねぇ。
  私たちのように、もう少しゆっくりしていこうとか、そういうことが出来なくて窮屈よねぇ・・・」
と、オバサンは言った。
 心身の病が心配されている皇太子妃をおもんばかって、同情して言っているのかもしれない。

 「そうですねぇ・・・でも、赤坂御所までの沿道で警備している警官もいますからねぇ。
  そこは予定通りに移動しないと・・・」
 「そうよねぇ・・・大変だわねぇ・・・」

 車がなかなか現れないと、警官が言い訳をした。
 「いやあ、他にも門がありますから、
  気分次第でそちらからお出になられることもあるんですよ・・・
  いや、手前どもの世界の言葉で言いますと、気分次第ということなんですがね・・・」

 門の中から何台かの車が現れた。その中の一台のガラスの下りた窓に皇太子妃の顔が見えた。
 いつもの笑顔で手を振っていた・・・

 2006/9/14「皇室と、理想の家庭」に書いたが、私は皇室フリークでもないし、かといって天皇制批判論者でもないし、まあ、たぶん大方の人と同じような感覚を持っていると思う。
 それで、一般の皇太子妃に対するバッシングについては、話しかけてきたオバサンと同様に、雅子妃への同情を禁じえない。
 それが皇族の仕事とはいえ、どのような心持ちの場合であっても、皇居の門を出入りするたびに窓を開けて笑顔で手を振らなければならない雅子妃への同情を禁じえないのである。

 笑顔で手を振る皇太子妃に、私は思わず手を振り返した・・・

 皇太子妃に続いて、秋篠宮ご夫妻の乗った車が出てきた。お二人ともにこやかに手を振っていた。

 私はお二人に、またしても手を振り返した・・・

 私は普段は無愛想な方で、相手が笑顔で手を振ったくらいでは手は振り返さない。銀座で安倍元首相や鳩山由紀夫民主党幹事長が手を振っていた時も、私はただ黙って見ていただけだった。芸能人でも変わらない。

 先にも書いたように私は皇室フリークでもなんでもない。何とも不思議である。
 皇太子妃にしても秋篠宮ご夫妻にしても、笑顔で手を振られると、つられて自然に手を振り返してしまうような、何かきっとそんな不思議な力をお持ちなのだろう・・

 この日、皇太子は愛子内親王と、秋篠宮家の二人の内親王はそれぞれ別の車で、別の門から出られたようだった。
 私たちの世界で言う、気分次第ということだったのかもしれない。

 ある地方在住の人が言った。皇居と皇族は東京でないと見られない。だから、いつか一般参賀に行ってみようと思っていると・・・

 連れ合いは、雅子妃の笑顔を写真に撮るのに成功した。ちょっとブレてはいたけれど、彼女のブログに使ったそうだ。
 一方、秋篠宮ご夫妻の車は、シャッターチャンスを逃してしまった・・・

写真・上/千鳥ヶ淵の土手。道の先にぼんやり見えるのが工芸館。
写真・下/千鳥ヶ淵と北の丸公園。水面を走るのは首都高速。
千鳥ヶ淵(南から北)
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