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分子鋳型を用いたATPセンサーの開発に関するお知らせ 当社と公立大学法人大阪府立大学(本部:大阪府堺市理事長:南努)は、このたび、電極チップ表面にアデノシン三リン酸(ATP)の分子鋳型を保有する過酸化ポリピロール(※1)膜を形成した分子鋳型センサー(※2)により、検体中のATP濃度を高感度かつ高選択的に、電気化学手法で計測する技術を開発いたしましたので、下記のとおりお知らせいたします。−記− 本研究は、平成18年12月より、当社と公立大学法人大阪府立大学産学官連携機構先端科学イノベーションセンターの間で実施された共同研究において得られた成果であり、平成19年9月19日から21日に開催された日本分析化学会第56年会(於:徳島大学工学部)において発表されました。 なお、本基盤技術については、当社と公立大学法人大阪府立大学との共同出願により、特許出願を実施しております。 ATPは、動植物から微生物に至る全ての細胞に存在する生体反応のエネルギーに関与する物質で、様々な食材はもちろんのこと人間や動物の血液・体表面にも存在する生体物質です。このことから、医療用水の汚染チェックや調理器具・厨房の清浄度の指標として、ATPを定量することの有効性が注目されています。ATPの定量については、ルシフェラーゼ(※3)という酵素が反応することにより発生する蛍光を測定する方法が最も有名ですが、使用する酵素を安定に保存することが困難であること、蛍光分析するための特殊な装置が必要であることや1回の検査当たりのコストが高いなどの短所も挙げられ、食品工場や厨房といった一般産業における清浄度チェックに使用するレベルには至っておりません。このような背景のもと、特殊な保存方法を必要とせず、操作が簡便であり、ランニングコストが安い高感度ATP計測方法が期待されます。 本共同研究により開発された技術は、陰イオンであるATPをドーパントとして含むポリピロール膜を電極表面に合成し、さらに、過酸化することによりATPを排出させ、過酸化ポリピロール膜中にATP分子の三次元構造を有する鋳型を発生させる技術が基盤となっています。ATPを含む水溶液にこのセンサーを投入し、所定の電圧をかけたときの電流値変化を計測することにより、検体中のATP濃度を選択的かつ高感度で測定が可能であることが判明しております。今後は、より高感度な計測を可能にする条件検討を継続するとともに、その結果にあわせて早期に上市するために、測定結果を可視化する安価な装置の開発を行う予定にしております。また、本技術はATPに特化したものではなく、様々な陰イオン物質に適用可能性が期待できる技術であり、環境中に存在する微量陰イオン計測技術としてオーソライズしていくことも視野に入れております。加えて、ドーパントとなる陰イオン化合物は電気化学的に着脱可能であることから、溶液からのドーパントの除去や濃縮に利用できる技術面からの開発も模索してまいります。 ◆図1 過酸化ポリピロール鋳型への(a)ATPの静電的濃縮と(b)電解検出 ※添付資料を参照(※1)過酸化ポリピロール: 過酸化ポリピロールは、陰イオン(ドーパント)を含むポリピロールを酸化することにより、ドーパントを取り出したもの。ポリピロールは、ピロールを酸化重合して得られる導電性高分子であり、重合時に陰イオン(ドーパント)がポリマーマトリックス中に自動的に挿入(ドープ)される。(※2)分子鋳型: 分子鋳型はテンプレート(基質,目的物質)のネガイメージとしてポリマーあるいは長鎖アルカン単分子膜内に作製される。酵素ー基質結合を人工的に模擬したもの。(※3)ルシフェラーゼ: 蛍の発光でよく知られる酵素の一種。この酵素はATPをエネルギー源として発光する。以 上