患者に身近に感じてもらおうと、医療機関が手掛けるイベントが増える中、国立病院機構岡山医療センター(岡山市田益)は11月3日、研修医並みの模擬手術、白衣を着ての看護体験などを盛り込んだ「病院フェスタ―オープンホスピタル」(山陽新聞社後援)を開催する。バザーや講演会が中心だった従来の企画よりも一歩踏み込み、参加者に本格的な病院業務を紹介する試みだ。医師不足や医療不信を背景に、患者との距離を縮めようと知恵を絞る医療現場を訪ねた。
「外科医である私たちが指導して模擬手術を体験してもらいたい。研修医とほぼ同じ訓練内容でかなり本格的。ぜひ中学生や高校生に参加してほしいんです」。岡山医療センター4階の医局で、消化器外科の太田徹哉医長が熱っぽく話す。
開催が間近に迫った「病院フェスタ―オープンホスピタル」。バザー、健康チェックなどのメニューもあるが、目玉となるのは6種類の医療現場体験コース。そのうちの一つ「外科手術体験」を担当する太田医長らは本番に向け、資料作成や備品チェックなど準備に余念がない。
当日は両手や片手で糸を結んだり、練習用につくられた皮膚モデルを医療用の針で縫うなど、手術の基本動作である「切る、縫う、縛る」を体験。切開部分が小さく、患者に優しい術法として知られる内視鏡も、モニター画面を見ながら練習用器具を操作し物を動かす訓練ができる。
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「今回は実際の病院業務を体験してもらうことを柱に考えた。医師、看護師、看護学生まで一丸となって開催にこぎ着けたい」。同医療センターの青山興司院長が胸を張って言う。
看護師らがチームを作り、共同で計画する「看護体験」も興味深い。
参加者は白衣に着替え、2人1組で互いの血圧や脈拍、体温測定をするほか、腕型模型を使い点滴のやり方も学ぶ。「説明用の資料はほぼ完成。かわいらしい子ども用の白衣もそろえたし、あとは当日を待つばかり」と的場佐智子看護師長。「看護師は、患者の異常を最初に見つけ、常に正確な判断と処置が求められる重要な役割がある。子どもたちには、ずばり、あこがれてほしいですね」と続ける。
「院内探検」と名付けられたコースは、新生児集中治療室(NICU)や手術室、最新の医療機器がそろった検査室など、普段足を踏み入れる機会の少ない施設を特別に公開する。クイズに答えながら巡る方式で、看護師らがスタンプ帳も作製し、配布する。「病院では、いろんな部門が協力し合って患者をサポートしている。そのことを楽しみながら見学できる」と形山優子看護師長。
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医療施設が院内を公開して開くイベントは今、全国で花盛りだ。とかく閉鎖的といわれる病院の垣根を取り払い、地域に根ざした病院であることをPRするのが狙い。総合病院から中小の医院までが健康チェック、食事提案などに工夫を凝らした催しを展開している。
青山院長は「病院への親近感を持ってもらうためには、院内バザーなども大切。だが、一番理解してほしいことは、スタッフが患者と向き合って頑張っているという医療現場の姿。子どもたちが医師や看護師を志すきっかけになればありがたい」と話している。
【体験コース】(希望者多数の場合は参加できないこともある)
(1)救急蘇生(そせい) 人形を使って心臓マッサージや人工呼吸などを行う。
(2)看護体験 2人1組で血圧などを測ったり、聴診器で心臓の音などを聞く。
(3)患者体験 おなかに重りを付けて妊婦になったりする。
(4)院内探検 スタンプラリーをしながら手術室などを巡る。
(5)臨床検査体験 呼吸機能検査や動脈硬化検査を行う。
(6)外科手術体験 糸結びを学んだり、傷を縫い合わせる手術を体験する。
※看護学校など施設見学のほか、地域特産物販売やバザーなどもある。
問い合わせは岡山医療センター(086―294―9911)。