NIKKEI NET 特集 スポーツから学ぶ経営戦略 勝利への執念 Desperate efforts to win 提供 富士通

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―――キャプテンはどのように決めますか。
 言葉になりにくいものを決めたり、伝えたりすることがリーダーの仕事です。ラグビーは、試合中はキャプテンがそれをやらなければならない。だから、キャプテンが大事にされます。キャプテンの選択がベストである必要はありませんが、選択したらそれをやり切ることは大事です。キャプテンの言ったことを出来るチームは強くなるし、結果が出ます。
 会社にも、もともとリーダーの素質を持った人はいますよね。でも、いないときもあります。そのときは、チーム全体のバランスを見て決めなければいけません。
 サントリーで私がキャプテンを3年やった後、ルーキーに近い選手がキャプテンに選ばれました。ほとんどが年上の選手たちですから、リーダーシップを発揮できないわけです。でも、経験の少ない若い選手を中心に置いたことで、ベテランの間に危機感が生まれ、かえってチームがまとまるようになった。チームのバランスが取れたんです。その年サントリーは日本一になりました。

―――組織づくりで重視することは何ですか。
 熱さです。何をやるにしても、熱は絶対欠かすことができないものです。熱さのない組織に、いくら良いものを準備しても結果が出ないと思います。スケジュール、あるいは練習内容を決めるときも、どうすればこのチームが盛り上がるか、熱くなれるかを考えて決めます。競争とか感謝とか、そういうものをかき立てるようにしていけば、選手たちは応えてくれるものです。たとえば、同じ能力のルーキーとベテランがいれば、まずルーキーを使います。すると、ベテランが「なんであんなやつにポジションを取られたんだ」と奮起して、必ずレギュラーに戻るんです。
 スタイルを持っている方が、見る側もプレーする側も分かりやすいかもしれません。しかし、フォワードをどう使うかというテクニックや戦術は、型に過ぎない。チームとして大切なものは型ではありません。サントリーでいえば「アライブ(生き続ける)」というスローガンというか、プライドです。そういうものを組織は持たなければならない。
 組織というのは、勝てば何をやっても許される。結果オーライですよ(笑)。何もやらないより、何かをやって結果を待つ方がいい。それに、何をやっても変わらないものがあります。組織のDNAは残るんです。例えば、早稲田大学のプレースタイルは変わって
きましたが、「頭のいいラグビーをする」というDNAは残っているのです。サントリーでも、そういうものを作りたいと思っています。

―――最後に、今後の抱負を聞かせてください。
 私は日本のラグビー界における自分の責務はあると思います。また、私にしか出来ないことにチャレンジしたいと思っています。私たちにとって、スポーツで夢と感動を伝えることがミッションですし、それは誰にでも出来ることではないという自負を持って生活をしています。まずは、サントリーを最高のチームにすること。そうすれば、視野はさらに広がるだろうと思っています。あと10年はラグビーの世界に没頭するつもりです(笑)。
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Column スポーツから学ぶ経営戦略 清宮克幸の視点3
熱さです。何をやるにしても、熱は絶対欠かすことができないものです。熱さのない組織に、いくら良いものを準備しても結果が出ないと思います。
結果を出すには、熱意と優れた環境の両方が必要であると語る清宮氏。
数十年に一度という超新星の爆発を逃さず記録する、熱心な研究者を支えるための大容量データベースを構築した大学の事例に学ぶ。
麻木久仁子がレポートする企業の先進IT活用事例
東京大学宇宙線研究所「スーパーカミオカンデの事例」はこちら≫
スポーツから学ぶ経営戦略 「勝利への執念」 「怖さを知ればより強くなれる」 掛布 雅之 氏 (プロ野球解説者)
「教えることが自らの成長」 江連 忠 氏 (江連忠ゴルフアカデミー代表)
「決断力」 羽生 善治 氏 (棋士)
「個を耀かせる指導力」
平尾 誠二 氏 (神戸製鋼ラグビー部ゼネラルマネージャー)
「ライバルを自らの成長の糧に」 西本 聖 氏 (プロ野球解説者)
「努力する才能」 有森 裕子氏 (元マラソンランナー)
「すべては決心することから始まる」 古賀 稔彦 氏 (柔道家)
「目標は遠く、高く、大きく」 羽川 豊 氏 (プロゴルファー・ゴルフ解説者)
「厳しさが喜びと自信を生み出す」
小谷 実可子 氏 (スポーツ・コメンテーター)
「組織の中に“熱”はあるか」 清宮 克幸 氏 (サントリーラグビー部監督)
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