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2007年10月23日

◎がん検診普及へ 受診率公表にもひと工夫を

 石川、富山をはじめ全国の都道府県で、がん対策基本法に基づくがん対策推進計画の策 定作業が進められているが、早期発見の決め手は言うまでもなく、がん検診の受診率を高めることであり、それは自治体のがん対策の大きな柱でもある。

 福井県は先日、市町の検診だけでなく、職域なども含めた受診率を全国で初めて公表し たが、石川、富山県でも参考にできる取り組みであろう。受診率についてはホームページで詳細な数字を公表して住民の関心を促すなど、データを活用する視点がもっとあっていい。今年度内に策定する推進計画でも、受診率を高める具体的な方策を示してほしい。

 各都道府県は市町村が実施するがん検診の状況をまとめているが、一般的に高齢者や自 営業者、主婦などが多く、職場や人間ドックでの受診は含まれていない。このため、福井県は県内すべての医療機関や検診機関も含めて実施状況を調査し、これらを「職域など」として受診率のデータに加えた。その結果、「職域など」は市町分の二倍近い受診者がいることが分かり、子宮がん、乳がんの女性のがんでは、市町の受診率より、医療・検診機関の率が大幅に低いという実態も浮かび上がった。

 検診の受診率を確実に上げるには、まず現状を正確に把握することが求められる。石川 、富山、福井三県では大学が中心となり、がん専門医を養成する「北陸がんプロフェッショナル養成プラン」が動き出しているが、そうした県を越えた連携機運の高まりを生かし、がん受診率についても三県で足並みをそろえ、比較できるようにしたらどうだろうか。

 国が六月に定めたがん対策推進基本計画では、現在のがん種別の受診率13―27%を 五年以内で50%以上に引き上げる目標が示された。がん対策基本法では、がん克服へ向けた地方自治体の責任が明記されたが、検診受診率に関しては市町村でかなり差が生じているのが現実である。

 石川県内の病院ではがん発見に威力を発揮するPET―CT検査装置の導入が進み、富 山県でも医療機関が共同利用できる「とやまPET画像診断センター」が十一月から運用を始める。こうした最新機器の広報活動を含め、県や各自治体には受診率を高める一層の工夫を望みたい。

◎かなざわごのみ 常設展示も考えてほしい

 金沢21世紀美術館を主会場に展開された「かなざわごのみ2007」は、二人のコー ディネーターの指導でビジネスに特化したのが特徴の一つだったが、一口でいえば、抑制がきいた、静かで奥深い作品ぞろいだった。金沢をファッション産業都市として国内外に発信する意欲がぴりぴり伝わってきた。それだけに、こうした展示を常設することも考えてほしいところだ。

 「世界の今に向けて伝統の再編集」のテーマで、食環境プロデューサー・木村ふみさん と、金沢美大教授の建築家・黒川雅之さんがコーディネーターとなって金沢の伝統技術と最新のデザインを融合させたのが生きて、ああ、これが新しい金沢だな、という新鮮なイメージの表出に成功したのだろう。

 金沢は日本随一の金箔産地だ。野村進拓大教授によると、「金箔は人の心を読む」とい うような言い方があるという。正確な意味は知らないのだが、金箔というのは微妙な生き物に似ており、丁寧な仕事をするとよくなり、そうでないとよくならない。それを指して扱う人の心を読むといったのではなかろうか。この金箔を用いた作品について、月光のような、ほのかな明かりの下で輝くのが金箔だとの解説にはこのうえなく納得がいった。

 黒川さんが指導した工芸の一部が来年、ニューヨークで開かれる見本市に出品されるそ うだ。世界に発信するにはそうしたことも必要だが、かなざわごのみのイメージをしっかり定着させるためには常設展示が欠かせないのではないか。

 県外の人に「加賀美人とはどんな美人か」と問われることがある。冗談半分に平清盛の 寵愛(ちょうあい)を受けた伝説の白拍子「仏御前」ですよ、現代でいえば、たとえば写真家の織作峰子さんのような人ですよ、と説明すると、なるほどと分かってもらえる。

 織作さんは仏御前の伝説がある小松市原町の近くで生を受けたことから、思いつきでそ ういうだけの話なのだが、そうか、よく分かったということになるのである。かなざわごのみにしても、作品をいつもみることができてこそ、これがかなざわごのみか、と理解してもらえるように思われるのだ。


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