厚生年金病院「法人譲渡は未決定」

 政府が定めることになっている厚生年金病院の「整理合理化計画」をめぐり、「企業グループが設立する法人へ譲渡する」という一部議員の発言等に対し、所管官庁の社会保険庁は10月22日、「そのような発言を方針として決定した事実はない」と否定した。同時に、社保庁は「(国会の付帯決議にも盛り込まれた)地域医療として必要な機能を残すことで(整理合理化)計画の策定作業を進めている」と、同病院の今後について強調した。

 社保庁の見解は、「厚生年金病院存続運動全国連絡センター」(丸山和彦・代表世話人)が同日に行った「同病院を公的病院として存続する」ことを求めた申し入れの席上で明らかになった。申し入れには、民主党の足立信也・参議院議員が同席した。

 厚生年金病院は全国に10カ所あり、政府が2005年度中に整理合理化計画を策定することになっていたが、期限を1年半あまり過ぎた現在に至っても策定されていない。同病院をめぐっては「地元自治体とも十分に相談して、地域医療を損なわないように公益性の高い病院存続の方策を考える」という国会での付帯決議もある中、「売却・廃止か、存続か」で、特に地元自治体・住民・患者が不安と危機感を抱いているという。

 こうした同病院の在り方に関し、今年9月1日に開かれた「厚生年金医療フォーラム」に、鴨下一郎・環境大臣の代理で出席した武見敬三・前厚生労働大臣が「(厚生年金病院は)企業の全面支援を受けた法人を設立し、法人に全国の病院を時価額で譲渡して運営する。既に法人設立のための事務所を開設し、スタッフも配置して作業が進行している」と発言。この発言の真意をただすために、同連絡センターが社保庁に見解を求めた。

 「武見氏の発言について政府はそのような計画を決めているかという」同連絡センターの質問に対し、社保庁は「発言を方針として決定した事実はない」と否定。「(発言が)政府の決定でないのなら、そのことを公に明確にする責任がある」とただしたことに関しては「(発言について)今のタイミングで『ああだ、こうだ』というコメントは差し控えるのが適当」と明言を避けた。
 また、「政府の計画決定以前に、所管する閣僚であった武見氏や現職閣僚が企業グループ設立法人への病院譲渡計画に関与していることを、どのように考えるか」についても、「コメントを差し控えたい」と言葉を濁した。さらに、「計画の策定作業の現状と見通し」では、「地域医療にとって必要な機能を残すことが大事だと考えている。待ったなしの状況で、今まさに審議している」という状況説明に止まった。

 申し入れの質疑を踏まえ、同連絡センターは「各地の厚生年金病院は、いずれも公的医療機関として救急救命や小児医療、総合的リハビリテーション医療などを担ってきた。公的病院としての存続を求める署名は100万筆を超えており、地元45議会の決議採択を重視し、公益性の高い非営利の公的病院として存続・充実させることが、地域の安心・安全の医療を確保する上で緊急不可欠」と訴えている。


更新:2007/10/22   キャリアブレイン

このニュースをメールで送る

ご自身のお名前:


送信元メールアドレス(ご自身):


送信先メールアドレス(相手先):


すべての項目にご記入の上、送信ボタンをクリックしてください。

ようこそゲストさん

※無料会員登録をしていただくと、すべての記事がご覧いただけます。

医療ニュース動画

未来の医療が見えますか
第4部「疲弊する勤務医」

今から約7年前、一人の小児科医が過労自殺しました。 この小児科医の過労死を基に、医師不足の問題と解決策を探りました。