119番通報をした患者やその家族などが救急隊員に暴力を振るったり救急車を損壊したりする事件が増えている。東京消防庁によると、暴力などによる救急活動の妨害行為は今年に入って既に35件発生しており(10月16日現在)、過去最多だった2005年の48件に迫るペースで急増している。「つかみかかる」「救急車を蹴飛ばす」などの軽微な行為を含めると件数は大幅に増えるという。東京消防庁の担当者は「119番通報した、その本人が殴りかかってくる」と困惑している。(新井裕充)
東京消防庁によると、「救急隊員を殴る」「救急車や設備機器を壊す」といった妨害行為は2003年から急増。
1990年の発生件数は8件だったが、2002年には26件、03年に40件と増加し、05年には過去最多の48件を記録した。
昨年は46件発生しており、東京消防庁の担当者は「05年に迫るペースで増えている」と話す。
一方、「救急車をタクシー代わりに使う軽症者」も深刻な問題となっている。厚生労働省によると、救急車による軽症者数は10年間で約95万人増加しているという。
東京消防庁の調査でも、救急車で搬送されたが診察を受けただけで入院しなかった軽症者は47.6%と約半数を占めており、救急車を呼んだ理由は「自力で歩ける状態でなかった」が52.0%と最も多かった(06年度調査)。
また、「夜間・休日で診察時間外だったから」という理由は16.6%だった(同)。
東京都内のある病院関係者は「当直の事務職員を怒鳴りつける“元気な患者”も増えている。軽症の患者さんが減れば当直医の負担も減るだろう」と話す。診察の順番を待ちきれず、119番通報して病院前に救急車を呼んだ患者もいたという。
厚労省は今月5日、産科に救急搬送された妊産婦の受け入れ拒否などの問題を受け、緊急搬送を受け入れた病院に診療報酬を加算する方針を中央社会保険医療協議会に提示し、来年度の診療報酬改定に反映される見通しだ。
現在、救急医療システムの見直しなど医療提供体制の望ましい在り方なども議論されているが、医療改革の第一歩は“患者の意識改革”かもしれない。
更新:2007/10/17 キャリアブレイン
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