「湖に浮かぶ白鳥は、水面下では必死に足を動かしているのです。けれど優雅な姿しか人には見せません。雛子、白鳥になりなさい。あなたも白鳥のように人の見ていないところで努力をするのですよ。努力は見せびらかさないから美しいのです」

こんな手紙が母親から届いたと独女の雛子さん（27歳）は戸惑っている。内容は坂東眞理子著「女性の品格」を読んだ雛子さんのお母さんが、独女に即効役立つ箇所だけを抜粋し、ご自身の所見を加筆して下さったものだ。即効とか、役立つ箇所だけというのは、すでに「女性の品格」を読破している筆者は、坂東氏曰く、品格に欠ける行動だとは十分承知しているが、折角の機会なので、「女性の品格」ならぬ「独女の品格」を雛子さんと一緒に学んではみませんか。

「礼状をこまめに書く。
品格のある交際は、まず礼状を書くところから始まるといっていいでしょう。電話やメールより、受け取った人の心に残るのは手紙です。いつもメールで済ませていると、いざというときに文字が書けなくなるのですよ。書道でも習っているのならいざ知らず、文字は日々の鍛錬なくしては達筆にはなりません。雛子、たまには母に手紙をください。

約束をきちんと守る。
品格のある人は何より人から信頼される人です。信頼されるには信頼される行動をとらなければなりません。
約束した時間は必ず守ること。時間厳守は最大のマナーです。どんな場所に行くときも、約束の五分前には必ず着く様にする。約束した仕事は約束した期限に仕上げる。出席するといった会合には必ず出席をする。電話すると言ったことは必ず電話する。誰かに紹介すると行ったら紹介する。送ると言った資料は必ず送る。
雛子、実家に帰ってくると母と約束したのなら、ドタキャンなどせずに必ず帰っていらっしゃい。

型通りの挨拶ができる。
冠婚葬祭の場ではおろおろ、うろうろ、きょろきょろしない。遠慮してひたすら控えめに振舞うのが女らしいとか、上品だとかいうことはありません。
「この度はおめでとうございます」「今日はお招きありがとうございます」「この度はご愁傷様でした」まずは型通りに話ができるのが品格のある女性の必要条件です。おめでたい席では隣の人に自己紹介をして、当たり障りのない話題で話しましょう。
雛子、他人の結婚式は男性と知り合うチャンスです。堂々と礼儀正しくですよ。

家族の愚痴を言わない。
職場の愚痴を言うとあなたの価値を下げるように、家族の愚痴を言うのもあなたの品格を傷つけます。親の悪口を言っても自分がその人の子供であり、その人に育てられたという事実は揺るぎません。
それを受け止め、肯定し、完全でない親を愛することから人間性が磨かれます。
雛子、母の姿は未来のあなたの姿です。決して母の愚痴も悪口も他人に言ってはいけませんよ。

自分へ投資をする。
勉強するにはお金がかかりますが、お金を払うと本気で勉強するので身につきます。無料の講座は意志が強くないと長続きしません。茶道、華道、音楽などの習い事も本気で身に着けるには授業料だけでなく、発表会や道具などの費用も必要ですからお金がかかりますが、人生を豊かにする投資です。
雛子、結婚して子供ができれば自分への投資は家計費から捻出できなくなりますよ。今のうちに教養や資格を身につけ、自分磨きをしておくのです。

電車の中での化粧は止めなさい。
会う前に化粧室で化粧直しをするくらいの余裕を持って家をでるのですよ。化粧は薄めに。よく手入れをされた肌に薄化粧が品格のある女性の化粧の定番です。

無料のものをもらわない。
無料のポケットティッシユ、自分で使おうとは思わないシャンプーや化粧品、食べてみようとは思わない食品の試供品には手を出さないようにしましょう。何でももらえるものはもらっておこうというのはちょっと卑しく、品格をなくします。ガラクタを部屋に溜め込む元にもなりますからね。母も気をつけます。

飲み放題の居酒屋でぐいぐい飲まない。
飲まないと損と計算する姿勢が卑しいのです。お得でなくても一杯ごとにその代価を払う方が、品格があります。母は絶対にできませんが。

独りのときを美しく過ごす。
誰も見ていないからと外見にかまわないのは自殺行為です。急に誰かが訪ねてきても慌てない程度の装いは大事です。家の中にも全身の映る鏡を置いて、見苦しい格好をしていないかチェックをする緊張感を持ち続ける。母も今後心がけます。
雛子、一度に書いてもあなたにはマスターできないでしょうから、今日はこれだけにしておきます。直筆の礼状を待っています。母」

「続編を楽しみにしているから」雛子さんには礼状を書くよう進言したのだが。（オフィスエムツー／佐枝せつこ）