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演劇:錦秋演舞場祭り(新橋演舞場) 文字通りの「勘三郎奮闘」公演

 昼が主演する歌舞伎3本、夜が森光子との初共演。文字通りの「勘三郎奮闘」公演である。

 昼の最初が「俊寛」。勘三郎の俊寛は、清盛への憎しみが強く表現された。勘太郎の成経、七之助の千鳥が初々しく、離れがたい恋人同士であることがよく感じられ、2人を一緒に戻してやろうとする俊寛の行動に説得力を与えた。亀蔵の康頼、弥十郎の瀬尾、扇雀の丹左衛門。

 中幕が「連獅子」。勘三郎の親獅子、勘太郎、七之助の仔(こ)獅子の3人による連獅子。動きの鮮やかさと息の合い方。気迫がみなぎる一幕だ。弥十郎と亀蔵の宗論。

 最後が「人情噺(ばなし)文七元結(もっとい)」(三遊亭円朝口演、榎戸賢治作、山田洋次補綴(ほてつ))。山田が従来の台本を洗い直し、セリフなどに手を加えた。勘三郎が、気がいいが短慮な長兵衛を魅力的に造形。補綴により角海老でのお久(芝のぶ)とのやりとりに情味が増し、お駒(芝翫)の長セリフにも説得力が出た。扇雀のお兼が、なさぬ仲の娘を思う気持ちをよく出し、勘太郎の文七、芝のぶが好演。

 夜が「寝坊な豆腐屋」(鈴木聡作、栗山民也演出)。東京オリンピック前の戦災で焼け残った下町を舞台に、豆腐屋の清一(勘三郎)と家を飛び出していた元芸者の母、澄子(森光子)との再会のてん末を描く。

 42歳の息子と芸者から金融業の社長になった母。母を案じながらも、過去のわだかまりから思いを素直に口にできない心の動きを勘三郎が自然に見せる。森との幕切れのやりとりが印象的だ。佐藤B作、金内喜久夫、波乃久里子、弥十郎、扇雀、田根楽子らの共演。26日まで。【小玉祥子】

毎日新聞 2007年10月22日 東京夕刊

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