後発品促進策に反発、日医の懸念

 厚生労働省が示した提案に対し、日本医師会が猛反発している。10月17日の中医協に「論点」として提示した厚労省の新たな後発品の使用促進策は、処方医が後発品銘柄を指定した場合も、薬剤師は医師に疑義照会することなく、別銘柄の後発品に切り替えて調剤可能とするもの。患者への説明と同意が大前提となるが、この場合、銘柄変更の理由についてインフォームドコンセントをとるのは医師ではなく薬剤師である。

 医師会は「処方権侵害」を理由に拒否反応を示すが、厚労省は、「医師が銘柄変更を認めない場合は、処方せんにその旨を記載できる」などと新たなルールが処方権侵害に当らない理由を説明している。だが、厚労省の問題意識の根底にあるのは、医師の職能などではない。

 提案には、後発品には存在しない剤型の先発品を医師が処方した場合、薬剤師が後発品に切り替えることも認めてはどうか、という内容も盛り込まれている。ここで厚労省が念頭に置いているのは薬局在庫の問題だ。
 例えば、慢性疾患の代表格である高血圧の場合、まだ後発品が存在しないARBをはじめ、カルシウム拮抗剤、ACE阻害剤など薬物治療の選択肢の幅は広い。これらにそれぞれの銘柄の複数規格、口腔内崩壊錠など先発メーカーの特許期間中の剤型もあり、さらに後発品の複数銘柄が加わるとなると、すべての製品を取り揃えることができる薬局など皆無に等しい。そこで、在庫の実情に合わせ、薬局に銘柄指定の自由を一定程度認めようというのが、厚労省の狙いである。

 厚労省にとっては、医療費抑制を目的に後発品の普及が進めばよいわけで、処方権の所在など、ここでは初めから問題にしていない。中医協は来月にも、再度、後発品の議論を取り上げる予定だが、医師会が厚労省の提案に反対するなら「処方は医師固有の権利」などという建前論は捨て、「在庫問題がネックなら、医薬分業などやめるべき」と主張した方が、よほど理にかなっているのではないか。

(医療ライター・田畑義行)


更新:2007/10/22   キャリアブレイン

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