病院が医師を確保しようとするときは、大学医学部の医局を通して紹介してもらう−。漠然と思っていたけれど、このごろはそうでもないらしい。インターネットで募集すると結構、応募があるのだという
◆例えばこんな人がいる。上水内郡信濃町立信越病院の内科医長、大脇嶺(たかね)さん62歳。今年4月、高知県の病院の副院長職を辞して移ってきた。信越病院は100床余り。前の病院に比べずっと小さいけれど「病院のホームページを見て、聴診器1本、原点に返った仕事ができそうだと思って決めた」という
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ホームページを開いてみる。「観光資源豊富な黒姫で地域医療に貢献し、自然を楽しむライフスタイルを実現しませんか」とある。床暖房完備の官舎を用意、別荘地を安く紹介−となかなか魅力的だ。4月には大脇さんを含めて4人の医師を新たに迎えた◆医師の流動化が進んでいる。背景には3年前導入の新しい研修医制度がある、と知り合いの病院長が教えてくれた。大学を卒業した医者の卵は研修先を自由に選べるようになった。その結果医局の力が落ち、病院が医師を奪い合う状況になった、というのだ
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地方の医師不足は深刻だけれど、長野県は自然に恵まれ、地域医療の伝統もある。条件は悪くない。魅力を積極的に発信して乗り切りたい。奈良の大学の通信課程に入り古代史を勉強し始めた、と大脇さんは元気いっぱいだ。