夜更かしを続けると体内時計が狂って不眠などになる「シンギュラリティ」現象が起きるのは、脳に約2万個ある時計細胞の刻むリズムがばらばらになるためであることを、理化学研究所などが突き止めた。同現象を巡っては、時計細胞が一斉に機能を停止するためとの説もあり、30年以上論争が続いていた。不眠や時差ぼけなどの予防、治療に結びつくと期待され、21日付の英科学誌ネイチャー・セル・バイオロジーに発表した。
体内時計は下等動物や植物にも備わる。ヒトなどの哺乳(ほにゅう)類では、脳の奥にある時計細胞が臓器などの時計細胞と同調し、体のリズムを作っている。体内時計が狂うと、細胞の活動に昼夜の差がなくなり、不眠や倦怠(けんたい)感の原因になるとされる。シンギュラリティは1970年に米国の研究者が発見したが、原因は不明だった。
研究チームは、マウスの皮膚の時計細胞を改造し、細胞自身が光を感知するようにして実験した。細胞の活動が鈍る時間帯に光を照射し、試験管内でシンギュラリティを起こすことに成功。時計細胞のリズムがばらばらになることを確認した。
理研の上田泰己チームリーダーは「今後、夜中にどの程度の光を浴びれば体内時計に影響するのかを調べ、予防や治療につなげたい」と話している。【西川拓】
毎日新聞 2007年10月22日 11時19分