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2007年10月22日

◎高校の規模適正化 先生の切磋琢磨促す視点を

 石川県教委は来年度から輪島実、珠洲実、中島の三高校で生徒募集を停止し、それぞれ 輪島、飯田、七尾東雲に統合するなど、能登の一学年二学級の小規模校を中心に次期高校再編整備計画をまとめた。学校規模を大きくすることで生徒が切磋琢磨(せっさたくま)しやすい環境を整えるのが主眼だが、再編校が魅力ある学校になるかどうかは、ひとえに教員の能力や熱意にかかっている。高校の規模適正化を考えるには、教員が刺激し合い、切磋琢磨が生まれるような職場環境を整えるという視点も大事である。

 次期高校再編の全日制ではこのほか、能都北辰と能登青翔、高浜と富来の組み合わせで 統合し、〇九年度から生徒募集を停止して新たに二校を設置する。門前、穴水については輪島の増改築後に募集停止を検討する。再編対象校はいずれも能登の一学年二学級の小規模校であり、定員割れになっていた。

 富山県でも一学年二学級の小規模校を中心に早ければ一〇年度から再編を実施する方向 性が示されているが、高校の規模適正化については生徒側の視点だけでなく、教える側に立った議論も深める必要があろう。学校の在りようを生徒本位で見つめ直していけば、教育を提供する側の質が問われてくるからである。

 小規模校は教員数が少ないため、大規模校に比べれば科目の選択幅が限られ、生徒の多 様なニーズにこたえにくいといった指摘がなされている。教える側からすれば、専門が同じ教員が少なければ、職場内での競い合いは生まれにくいだろう。

 輪島実や珠洲実と統合する輪島、飯田では、それぞれ四系列の総合学科が開設され、普 通科では単位制が新たに導入される。入学後に系列が選べる総合学科や、生徒が希望に応じて科目を選択する単位制は制度上、生徒が先生を選ぶ余地が広がることを意味する。生徒の多様な進路希望にこたえるためにも、教員の一層の意識改革が求められている。

 また、中島の普通科演劇コースは七尾東雲で演劇科に格上げされ、生徒を全国から募集 することになった。全国でも数少ない演劇科を学校の新たな看板にしていくためには、地元七尾市の手厚い支援体制も欠かせないだろう。

◎税の無駄遣い 与野党一致で取り組みを

 「政治とカネ」やインド洋での給油活動など、与野党のミゾが埋まらぬ問題が多いなか 、与野党が一致して取り組める政策課題がある。税金の無駄遣いに大胆にメスを入れる作業である。所管官庁が統廃合に強く抵抗している独立行政法人の見直しや、随意契約をやめたはずの公益法人が、さまざまな条件を付けて競争入札を実施していない例など、官の無駄は枚挙にいとまがない。こうした税の無駄遣いについて、与野党がスクラムを組むことがあってもよいのではないか。

 内閣府は先ごろ、国・地方の基礎的財政収支を二〇一一年度に黒字化する政府目標につ いての試算をまとめたが、歳出削減が進まず、名目成長率が想定の3%から2・2%になった場合、最大で六兆六千億円の増税が必要という。内閣府の試算は、歳出拡大圧力が高まるとして、毎年一兆円ずつ歳出を積みます条件でなされている。そうした歳出増を前提にした試算は、内閣府が消費税率引き上げのレールを敷くために、財政再建のための増税必要論を導き出そうとしているようにも見える。

 二〇一一年度に基礎的財政収支の黒字化を図る政府目標は、平均3%の名目成長率を維 持し、十四兆三千億円の歳出削減を行えば、増税なしで実現可能とされている。経済成長による税収増の果実と歳出削減の二本柱で「増税なき財政再建」をめざすものである。その目標達成がもし厳しいとなれば、歳出改革にさらに取り組むのが筋である。

 基礎的財政収支の二〇一一年度黒字化は、民主党も政権公約にうたっていることであり 、そのために、国から年間三兆円の補助金が出されているという独立行政法人の改革などを主張している。そうした官の無駄をなくす改革に与野党が一致して取り組むよう望みたい。

 また、より高い経済成長をめざす取り組みもないがしろにしないよう注文しておきたい 。福田内閣になってからは、いわゆる成長重視派が後退し、財政再建派といわれる人たちが政権の中枢を担うようになった。これに伴って、福田内閣は増税路線への傾きを強めているが、「経済成長なくして財政再建もない」ことをあらためて銘記してもらいたい。


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