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心の叫びをラップに乗せて スーダンの元少年兵

2007.10.21
Web posted at:  19:34  JST
- CNN

ワシントン(CNN) 父がゲリラに加わり、母は殺された。姉妹は繰り返しレイプを受け、目の前で村が焼き尽くされた。怒りと憎悪に満ちた少年は、9歳で銃を取る――。内戦下のスーダンで少年兵となり、過酷な運命を生き抜いたラップ歌手、エマニュエル・ジャルさんのライブがこのほど、当地のクラブで開かれた。

客席を埋めたのは、何不自由ない生活を送る米国人の若者たち。ジャルさんがラップのリズムに乗せて語る体験は、かれらの想像をはるかに超えていたに違いない。

ジャルさんはスーダン南部出身。生まれた年は「たぶん1980年だが、正確には分からない」(本人談)。同国では83年から、イスラム法の導入に反発するキリスト教徒主体の反政府組織、スーダン人民解放軍(SPLA)がゲリラ闘争を展開。戦いに巻き込まれて家族も住む場所も失ったジャルさんは、国連の難民キャンプに収容される。その後SPLAに誘われるまま、訓練を受けて少年兵となった。

やがてSPLAの分裂を機に、400人の仲間たちとともに逃亡の旅に出たジャルさん。飢えと闘いながら3カ月間、ジャングルや砂漠の中を歩き続けた。ワニに襲われたり水におぼれたりして、少年たちは次々と死んでいく。「腐った仲間の肉を食べようとした日もあった」――ジャルさんのラップには、そんな歌詞が出てくる。

最後まで生き残った仲間は、わずか12人。ジャルさんはそこで、英国人ボランティアのエンマ・マキューンさんと出会う。マキューンさんはジャルさんをかくまってケニアへ連れ出し、母親代わりとなって学校に通わせた。「イスラム教徒とアラブ人を殺すことしか頭になかった」ジャルさんの心は次第に開かれ、「憎しみを乗り越えて、許すことができるようになった」という。

ジャルさんの歌の才能は、ここで開花した。ナイロビでホームレスの子どもたちのためにコンサートを開き、支援者の協力を得てCDも発売。英語、スワヒリ語、アラビア語など5カ国語で歌うラップは、ケニアで大きな反響を呼んだ。祖国の平和を願い、スーダンのベテラン歌手、アブデル・ガディル・サリムさんと共演したアルバム「シースファイア(停戦)」で、欧州にも人気が広がり、今はロンドンを拠点に音楽活動を続けている。

ワシントンでのライブは、93年に交通事故で亡くなったマキューンさんへの追悼歌で幕を開けた。「ぼくが生き残ったのには理由がある。歌で人々の心に触れ、いやすことが、ぼくに与えられた使命だと思っています」――ジャルさんははにかむような笑顔で、観客に語りかけた。

ロサンゼルスの音楽会社とも契約し、その半生がドキュメンタリー映画にもなるなど、スターへの道を順調に歩み続けるジャルさん。だが、家族は今もスーダンやケニアに住む。ライブで集まった寄付金は、アフリカでの学校建設に役立てるという。




元少年兵の体験をラップで語るジャルさん

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