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社説:視点 対テロ新法 民主党の方向感覚=古賀攻

 民主党が油の転用疑惑を熱心に追及している。海上自衛隊がアフガニスタンでの対テロ作戦向けに提供した艦船用の油を、米軍がイラク作戦に「目的外使用」していたのではないかという問題だ。

 事実だとしたら、現行のテロ対策特措法違反になる。徹底した解明を求めるのは当然だ。

 では、仮にすべての情報が公開されて白黒がつき、今後転用をさせない仕組みが整ったとしたら、民主党は給油活動の継続に賛成するのかというと、否である。

 同党の小沢一郎代表は、給油支援そのものを憲法違反だと主張している。政府が憲法解釈上否定してきた集団的自衛権の行使にあたる、というのがその理由だ。

 最高法規に反すると言っている以上、より下位の法令に違反しているかどうかは副次的な問題でしかない。したがって、理屈上は転用があろうがなかろうが、民主党の反対姿勢は変わらないということになる。

 それは一つの考え方だろう。ただし、給油支援から退いても、アフガンでの対テロ包囲網からは離れないという前提に立つなら、民主党から国際治安支援部隊(ISAF)や地方復興チーム(PRT)への参加内容、条件について具体的な提案がなされるべきだった。ところが、これまでの国会論議を聞く限り、そのような展開にはなっていない。

 とどのつまり、今の民主党は小沢氏の主張に振り回されて、方向感覚を失っているのではないか。転用問題に質問が集中すればするほど、この党の苦しさが透けて見える気がして仕方がない。

 参院選で大勝し、給油活動の中断やむなしというところへ政府を追い込んだ立役者は、間違いなく小沢氏である。しかし、インド洋での海自活動を憲法違反だとする小沢氏の見解が、党内で共有されてきたわけではない。

 参院選向けの同党マニフェスト(政権公約)には、給油支援活動に関する記述がなく、昨年12月策定の政策マグナカルタにおいても、国連平和活動への積極的参加がうたわれているだけだ。

 01年10月に政府がテロ特措法案を提案した時、当時の鳩山由紀夫・民主党代表は小泉純一郎首相とのトップ会談に臨み、賛成寸前まで行った。反対に回ったのは、小泉官邸と民主党との接近を警戒した自民、公明両党の一部が国会の「事前承認」を認めず、「事後承認」としたからだ。決して憲法違反が反対理由ではなかった。

 今週から新テロ特措法案の審議が始まる。この際、民主党はいったん小沢理論を棚上げしたらどうか。そのうえで不可欠なのは、アフガン本土で日本がなし得る具体的な対案の提示である。どのような活動が効果的か。自衛隊の派遣は必要か。「民生分野」といった抽象的な提案では、とても政府との論議にはなるまい。

毎日新聞 2007年10月21日 0時16分

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