ドームやきものワールド
11/16〜20、ナゴヤドーム。文化と出会い、暮らしを楽しむ「器の世界」
【暮らし】エクササイズで改善 乳がん手術後の痛みや腫れ2007年10月21日 乳がんの手術後、腕が動かしにくい、脇の下のリンパ節なども切除したために、リンパ液の流れが滞り、腕が痛む、腫れるなどの症状に苦しむ人は多い。外出をあきらめ、精神的にも落ち込む女性たちのためのリハビリエクササイズに取り組む動きが始まっている。同じ立場で話し合う場も設けて、体と心双方を大切にするのが大きな特徴だ。 (野村由美子) 横浜YWCAの講座は、乳がん手術経験のある日本舞踊家、大木まり子さん(43)が講師だ。 九月下旬の講座は三十歳から六十九歳の五人が参加した。静かな音楽が会場に流れる中、あぐらを組んで「首の後ろ、耳の下、きゅっきゅっと押して。呼吸忘れずに」。リンパ節を押す、肩を上げ下げ、鎖骨や肩甲骨を開いて縮めて−。寝ころんで腹式呼吸や胸式呼吸も。ゆっくりした動きと大きな呼吸の注意が重ねられる。「手術あとに息が届くような意識で呼吸して」「そこは痛い? もう少し動かせるから、怖がらないで息をはきながら」。昨年末に手術した女性(45)は五回目。「痛くて右側が前かがみに固まっていた。講座を受けて大きく呼吸して胸が張れるようになった」と笑顔で語る。 運動後はおしゃべりタイム。四月末に手術をした女性(30)は大好きなスポーツを今後どれだけできるか、不安を口にしていた。大木さんは指導もするが「私はこうだった。今私はこうしている」と体験談も多い。「私もやっぱり今も痛いから仲間同士で安心感を持ちたい。体を動かして語り合う中で自信と希望が生まれる」と大木さん。 大木さんは三十四歳で乳がん手術を受け、右胸と右脇の下のリンパ節を全摘出した。麻酔が切れた直後から、金縛りにあったかのように腕、肩、胸部がかちかちに重く痛んだ。「二歳の息子の世話もある。どうやって生きていくの!って途方に暮れた」と振り返る。 病院のリハビリを何回もこなしたり、腕をさすり続けたりする中で、舞踊経験を生かし、患部だけでなく呼吸も含めて体全体を動かすリハビリができないか、と考えるように。リンパの流れ、体の仕組みなど独学で続け、自分の体で確かめながら考えたエクササイズをリンパ浮腫マッサージの専門家らに評価してもらってまとめた。 「リンパの流れと呼吸を合わせながら、ある程度筋肉に負荷を掛け、開放、収縮させる運動がポイントです」。幼少時の自身の愛称から「マーニャサイズ」と名付けた。リンパ浮腫対策委員会という患者会も立ち上げた。 痛みや病気の不安を抱える受講者たちに大木さんは「治ろうとあなた自身が思っていなくても体は思っている。だからあなたも助けてあげて」と伝える。六月末に手術した女性(48)も「手術後も抗がん剤などの治療が続くと落ち込む。でも通院以外に何をしたらいいか一人では分からない。一般のヨガ教室などは胸の痛みがあるし、着替えも抵抗が。ここならホッとできる」と話す。大木さんは、横浜市の男女共同参画センターの講座でも講師を務める。 東京YWCAは二〇〇五年度から、オーストラリアで広く実施される乳がん手術後のリハビリプログラム「アンコア」を取り入れた講座を開催。プールエクササイズも取り入れるほか、やはり毎回学習会やおしゃべり会が組み合わされている。 プールは一般の人とは別で、傷あとを気にせず入れる配慮も。現在までに百人以上が参加する。担当者は「一人で悩んでいる人は多いけど同じ体験を経た者同士、話し合うと気持ちが強くなる。体が改善してくると気持ちも明るくなる。二つは不可分です」。来年度以降も開催を予定している。
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