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支局長からの手紙:名医の声高 /奈良

 大阪勤務時分の5年前に大腸を患ってから毎年、内視鏡検査を受けています。2回目からずっと担当してもらっている先生は、大阪でも有名な大腸カメラの使い手。先日は、その先生を紹介した先輩記者から「さすがにめっちゃうまかったわ」と、お礼を言われたほどです。

 腸内に異常がないかを見る一番効率よい手段は、内視鏡による内壁の確認といえます。前夜に錠剤、当日朝からは液体の薬2リットルを飲み、腸内を洗浄。その後、先端にカメラが付いた直径が鉛筆大のケーブルをバックからスルスル入れて、中の状況はカラーモニターで患者も同時に見るのです。

 異変を見逃さないのはもちろんですが、大腸はホームベースを縦に伸ばしたような形ですから、角の部分でカメラをいかにスムーズに進めるか。これで医師の操作技術の巧拙が決まります。前述の先生の場合は、世間話をしながら微妙にケーブルを押したり引いたりするコーナーワークで、いつのまにか終点まで到達します。大腸内壁には神経がないとはいえ、ここを上手に通過できない先生だと、腹が突っ張って、体中をこわばらせることになります。

 そんな話をある時、同僚としていたら、後輩支局長から「お尻の手術名人は知らない?」と尋ねられ「うん、おるで。ただし…」。入院していた当時、腸疾患の派生で肛門近くにも小さな穴があきました。同じ病院で評判の医師が、レーザーメスで切ってくれました。短時間の手術後、看護師からは「最初のおつうじは相当痛い」と脅されていたのに、全く痛みがないまま。おかげで今も好調を持続しています。

 ところが、名医には患者にありがたくない特徴が一つだけありました。声がデカいのです。待合から診察室に入り、しばらくすると「いいですか、お尻にはイボ×とキレ×…があって、あなたはキレ×。手術しないと完治しません!」などと、患者ごとに扉を越えて待合中に聞こえる声量で説明しますから、たまりません。お尻の病気は若い女性にも多く、診察を控え赤面する人も何人か見かけました。

 名医の声高。多少恥ずかしくとも、先生の腕が確かなことが、信頼の第一要因であることに変わりはありません。【奈良支局長・井上朗】

毎日新聞 2007年10月21日

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