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2007年10月21日

 ある大学近くの地下鉄駅に「学生は階段を利用すること」という看板が立てられた。学生がエスカレーターを使って、高齢者など他の乗客に迷惑をかけぬよう大学側が立てたようだが、驚くべきことに、やがて学生だけでなく一般客も、すすんで階段を利用するようになったという

心理学者の内藤誼人さんの著書「人は『暗示』で9割動く」に紹介されていた話で、ある人に何か注意したい時、直接言わずに別の人に注意して気づかせる「間接暗示話法」の一種だそうだが、相手を無理なく動かす手法だろう

今年の「食育白書」で、食事の時に「いただきます」と言える子は、中学生で半数以下にとどまっていると指摘された。茶髪ギャルが食事の前に手を合わせるのに「感心した」という投書が届くくらいだから、驚く数字とも言えまい

親が悪いと嘆く大人たちにしても、飲食店で食事をする前に手を合わせる、あるいは感謝の念を示すしぐさをする人は、とんと見かけなくなった

礼儀作法は態度で示してこそ人はついてくる。子供のあいさつ欠如は、いい年をした大人が自らのしぐさに目を向ける「間接暗示」と受け止めたい。


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