2007年04月19日
引き篭もりの息子を父親が殺すこと
このニュースを読んで胸が苦しくなった。
*
73歳が32歳長男を殺害し自首…「家庭内暴力に苦しみ」
16日午後3時50分ごろ、大阪市東住吉区北田辺、無職木岡新次容疑者(73)が「息子を殺した」と大阪府警東住吉署に自首した。
調べでは、木岡容疑者は同日正午ごろ、裕孝さんを羽交い締めにし、腕で首を絞めて殺害した疑い。裕孝さんの生活態度を巡って言い争いになり、「ごめんな」と泣きながら首を絞めたという。
木岡容疑者は妻(68)と裕孝さんの3人暮らし。妻は当時、買い物に出かけていた。夫婦は、高校卒業後も定職に就いていない裕孝さんから度々、暴力をふるわれ、木岡容疑者の妻が隣家などに逃げ込むこともあったという。
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実家に引き篭もっていたとき、父親に殺されるかもしれないといつも思っていた。
この家族と違って俺は暴力を振るっていたことは全くなかったし、そもそも二階の部屋に鍵をかけて完全に閉じこもっていたので、もう何年も一階にいた父親と顔を合わせたことすらなかった。そもそも暴力なんて振るう勇気すらない。
でも、いつか絶対に殺されるかもしれないと思っていた。
*
たしか2001年の冬だったと思うけど、父親が酔っ払って一階であばれていたことがあった。深夜だからもちろん二階にいる俺にもその物凄い騒音が聞こえてくる。がんがん壁を蹴る音。物を投げる音。大声で罵倒する音。もちろん俺を罵倒しているのだ。
昔から無口でおなしい父親があんなに我を忘れて暴れている姿は初めてだった。そのあいだ怖くて怖くて、ただ二階の自室で耳を塞いでることしかできなかった。布団をかぶって目を閉じて、ただぶるぶると震えていることしかできなかった。
一階から包丁を持った父親が、いまにも上がってくるんじゃないかと思った。そうなったらもう俺にはどうすることもできない。身を守るすべがない。体中めった刺しにされる。そして血まみれになって、冷たく床に横たわるしかない。
*
その夜は一時間くらいして父親が暴れるのは収まったが、それ以来ずっといつか殺されるんじゃないかという可能性は頭の片隅に残ることになった。そういう可能性はゼロじゃないし、もっと年月がたち父親が我慢の限界を超えてしまったら俺は殺されるんじゃないかと。
その夜から眠れなくなった。ほとんど一睡もできなくなった。俺が寝ているときに、父親が包丁片手に二階に上がってくる姿が脳裏から離れなくなったのだ。
数日後、近くの金物店で包丁を買った。護身用だ。それを枕の下に置くことで、やっと眠ることができるようになった。身を護ってくれるという安心感。それ以来ずっと枕の下に包丁を置いて眠るのが習慣になった。
結局そういう最悪な事態はおこらなかった。今では枕の下に包丁を置かなくても眠れるようになった。このニュースを読んで、もし今でも引き篭もりを続けていれば、その可能性だってあったんだなと思った。
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73歳が32歳長男を殺害し自首…「家庭内暴力に苦しみ」
16日午後3時50分ごろ、大阪市東住吉区北田辺、無職木岡新次容疑者(73)が「息子を殺した」と大阪府警東住吉署に自首した。
調べでは、木岡容疑者は同日正午ごろ、裕孝さんを羽交い締めにし、腕で首を絞めて殺害した疑い。裕孝さんの生活態度を巡って言い争いになり、「ごめんな」と泣きながら首を絞めたという。
木岡容疑者は妻(68)と裕孝さんの3人暮らし。妻は当時、買い物に出かけていた。夫婦は、高校卒業後も定職に就いていない裕孝さんから度々、暴力をふるわれ、木岡容疑者の妻が隣家などに逃げ込むこともあったという。
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実家に引き篭もっていたとき、父親に殺されるかもしれないといつも思っていた。
この家族と違って俺は暴力を振るっていたことは全くなかったし、そもそも二階の部屋に鍵をかけて完全に閉じこもっていたので、もう何年も一階にいた父親と顔を合わせたことすらなかった。そもそも暴力なんて振るう勇気すらない。
でも、いつか絶対に殺されるかもしれないと思っていた。
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たしか2001年の冬だったと思うけど、父親が酔っ払って一階であばれていたことがあった。深夜だからもちろん二階にいる俺にもその物凄い騒音が聞こえてくる。がんがん壁を蹴る音。物を投げる音。大声で罵倒する音。もちろん俺を罵倒しているのだ。
昔から無口でおなしい父親があんなに我を忘れて暴れている姿は初めてだった。そのあいだ怖くて怖くて、ただ二階の自室で耳を塞いでることしかできなかった。布団をかぶって目を閉じて、ただぶるぶると震えていることしかできなかった。
一階から包丁を持った父親が、いまにも上がってくるんじゃないかと思った。そうなったらもう俺にはどうすることもできない。身を守るすべがない。体中めった刺しにされる。そして血まみれになって、冷たく床に横たわるしかない。
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その夜は一時間くらいして父親が暴れるのは収まったが、それ以来ずっといつか殺されるんじゃないかという可能性は頭の片隅に残ることになった。そういう可能性はゼロじゃないし、もっと年月がたち父親が我慢の限界を超えてしまったら俺は殺されるんじゃないかと。
その夜から眠れなくなった。ほとんど一睡もできなくなった。俺が寝ているときに、父親が包丁片手に二階に上がってくる姿が脳裏から離れなくなったのだ。
数日後、近くの金物店で包丁を買った。護身用だ。それを枕の下に置くことで、やっと眠ることができるようになった。身を護ってくれるという安心感。それ以来ずっと枕の下に包丁を置いて眠るのが習慣になった。
結局そういう最悪な事態はおこらなかった。今では枕の下に包丁を置かなくても眠れるようになった。このニュースを読んで、もし今でも引き篭もりを続けていれば、その可能性だってあったんだなと思った。
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