開発したソフトの画面を見る堀教授=京都府宇治市、京都大防災研究所
兵庫県内で二十六人が亡くなった二〇〇四年の台風23号禍から二十日で丸三年となるのを前に、課題になった水害時の迅速な避難を目指し、京都大防災研究所の堀智晴教授(46)=水資源工学=が、人間の心理状態を反映できるコンピューターソフトを開発した。個々人の危険に対する認識度合いを設定すれば、雨の降り方などの状況変化に応じた人々の行動を再現できる。画面上での水害の仮想体験を通じ、構えの大切さを学ぶことができる。
台風23号による水害からの避難では、自治体が住民に危険を十分伝えられなかったことともに、避難勧告を受けても、すぐに行動しない住民の意識も問題になった。
堀教授は、個々人の危険に対する認識や経験の違いで、同じ状況に直面しても異なる反応をすることを重視。仮想体験を通じて、住民が避難行動を学習したり、行政が避難方法を検討したりすることを目的に、ソフトの開発に取り組んだ。
ソフトでは、個人の危険に対する認識を数値で設定できるようにし、これに降雨や浸水の状況、避難勧告発令などの外的条件を掛け合わせると、危険の認識が変化するようにした。危険の認識が深まれば、コンピューター上の人々は自主避難などの行動を始める。
また、避難の成功は、避難経路の浸水の程度にもよる。そこで、デジタル地理情報を活用し、街路を画面上に再現。浸水状況をかぶせてアニメーションで表現した。
堀教授は「災害への対応は(受ける被害への)想像力で決まる」と強調。ソフトの活用を呼びかけている。(森 信弘)