ミッドナイト文庫 《若きお笑い芸人たちpage
3》
■ブラックマヨネ−ズ
京都出身の二人組「ブラックマヨネ−ズ」はストレ−トである。
「名前の由来は簡単でおぼえやすいと思って」
吉田敬さん(取材当時24)は万能型のネタ作りに明け暮れている。出し物はコント。「漫才もできるんですけど」
ミナミ2丁目劇場ではいわいる普通の漫才は上演しない。若い客層に合わせて動きのあるコントが主流である。
「ウケたとき、なんか人間として認められたように感じるんです」
客の笑いが掴めない時は困惑する。そしてヤキがまわり、キレる。
「わがままで、嫌われ人生ですわ。ファンレタ−は1通もけいへんし」
しかし、若手のお笑いたちには人気がある。客に媚ないいさぎよさがあるからだ。客の中心は小中学生。客が芸人を育てる時代ではない。
「目先よりも将来を考えてます」
現在の収入は限りなくゼロに近い。
「ティッシュを配ってしのいでます。それで月に12万ぐらいになります」
相方の小杉竜一さん(取材当時24)は長男である。
「親には長男は死んだと言われてます」
練習はバイトを終えた夜の公園。
「どこにでもおるカル−く笑いを考えていたタイプでした」
吉本のNSCで笑わせる努力の大切を知った。
「自分で自分のおもろいとこを分からんとダメです」
NSCの卒業生で売れるタレントは2%の確率である。
「ネタが浮かばんと首に腫瘍ができますねん。ネタができると消えます」
吉田さんはマンガ家を目指したことがある。
「ヒ−ロ−は描けるけど。ヒロインがあきません」
ブラックマヨネ−ズの夢は有名になること。もっともらしい理由をつけないストレ−トさが彼らの魅力である。と同時にそれが嫌われる理由にもなっている。
「自分らの名前がついたテレビ番組なんか持ちたいです」
安っぽい妥協はしない。
「ボクらはサラリ−マンやないから」
プロ意識はある。しかしわざとらしい嫌味な芸人ぽさはない。
「親から、こんな子を拾てきて損した。と言われてます」
ネタが浮かばす腫瘍が出る吉田さん。バイトでテッシュを配る小杉さん。有名になることを夢みながら二人は毎夜練習する公園で笑いと心中している。彼らは03年、上方漫才コンテストで優秀賞を受賞した。
■ライセンス
お笑いタレントになるにもいろんな方法がある。
「ボクらは吉本のNSCに入学してないんです」
ダブル・ボケ・コント「ライセンス」の井本貴史さんと藤原一裕さんは奈良県立上牧高校の同級生。
「ミナミの2丁目劇場へ直接行ってオ−ディションで勝ち上がってきました」
結成は2年前。今年20歳になる二人はいつも一緒のマブダチコンビ。
「寝てる時とバイトしている以外は二人でなんやかんや喋ってます」
やんちゃだった井本さんはサッカ−のMFでインタ−ハイに出場している。
「なんやかんや話してる時に、こんなボケがあったらおもろいとか出てくるんです。喋ってて自分らが爆笑したらお客さんにもウケます」
自由に笑いの発想を楽しむ藤原さんは空手初段。二人は体育会系。ガァツがある。
「練習はバ−テンのバイトが終わる夜中の2時から始めるんです」
近所迷惑を考えて高速道路の高架下でネタ合わせ。
「テンションが高なってくると声が大きなって。苦情が出たんです」
周囲は田んぼ。遠くの民家から警察に通報された。
「やってきたおまわりさんと仲良うなりました」
二人の頑張る姿に警察官もファンになった。ネタはSMAPの曲で田植えを踊る。
「うまいのかヘタなんかわかれへんけど。自分らが笑えるんです。それに笑いはドラッグみたいなとこ、ありますよね」
確かに、笑いは人生の媚薬である。
「笑いを取った時はハイになります。そやから次はもっと笑わしたろ。そんな欲が出てきます」
井本さんの出す笑いのパスを藤原さんが回し蹴る。
「好きなことをしてるから毎日が楽しいです」
二人はデ−トもそっちのけで練習する。その結果、30組以上が参加するイベントの上位5組に残った。
「まぐれです。そんなにトントンいけるはずありません」
レギラ−もできた。中京テレビから出演の依頼もきた。
「これからは自分たちで自分たちのスタイルをどんどん変えてゆかんと」
二人は変化し続けることによって新しい笑いのライセンスを取得できることを知っている。
「最初のギャラは700円でした。今は1万円あります」
やりたいことをつらぬく「ライセンス」に免許皆伝。なんてね。
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