企画特集
第17回 連続企業爆破事件 1974年(昭和49年)8月30日 (2/4ページ)
土田総監は顔を真っ赤にして「犯人はまた新しい爆弾を持っている。捜査官や一般人を巻き添えになっては・・」と報道中止を懇請された。社に帰り青木彰編集局長に報告すると青木局長は「新聞は作るが、報道関係と容疑者居住近くには逮捕終了後までを配達を遅らせる」と、販売局長を呼び上げ、深夜の協議、新聞界で恐らく初めてで最後であろう『遅配大作戦』をとったのである。
産経新聞の19日の朝刊にはこれから行われる強制捜査が報道されている。
「産経さんの朝刊は本当ですか」と捜査本部副本部長の肩書きの警察署長から私のところに問い合わせがきた。
捜査本部の幹部が知らない事実を産経が報道しているのである。19日朝、警視庁は爆弾犯7人を逮捕、2人を指名手配、17カ所を家宅捜索した。
圧巻はこの日の夕刊、主犯格、大道寺将司容疑者逮捕の写真である。「スッポンの小野」が4時間デカを尾行、ものにした(別項小野記者参照)。朝、夕刊産経の完璧なスクープである。
昭和50年の日本新聞協会賞、第23回菊池寛賞を受賞した。
調べが進み恐るべき真相が明らかになった。この爆弾はもともと狼たちが昭和天皇、皇后暗殺のため那須ご用邸の帰途、荒川鉄橋でお召し列車を爆破しょうという「虹作戦」。
半年前から計画、準備していたという。8月14日未明、爆弾を鉄橋に設置しようと登っているとき、数人の黒い人影を発見、尾行のデカと早合点、作業を中止したのである。
平成17年1月12日、朝日新聞は総合面で「NHK『慰安婦』問題で中川昭・安倍氏が幹部を呼び『内容に偏り』と指摘、番組改変した」と大きく報道、これに対しNHKは「事実を歪曲され、信用を傷つけられた」と朝日の社長と編集局長に謝罪と訂正記事を求めるとニュース枠で反論、朝日、NHKの全面戦争に発展、2年以上経つが、結着をみていない。
番組改変に政治介入の有無だけが争点となっていたが、番組の内容そのものは慰安婦問題で昭和天皇が慰安婦に処刑されるドラマである。
狼たちが三十余年前に描いた「虹作戦」の思想は日本を代表する報道機関に脈々と受け継がれていることを知らされた想いである。
■その後の実行犯たち
死刑判決となった大道寺将司、益永利明は第3次再審請求中。黒川芳正は無期懲役、宇賀神寿一は懲役18年の刑期終え、出獄した。
佐々木規夫、大道寺あや子、浴田由紀子の3人は、佐々木がクアラルンプール事件(昭和50年8月4日)で、浴田と大道寺あや子がダッカ事件(同52年9月28日)で、ともに超法規措措置により出獄、海外に逃れた。
その後、浴田は平成7年、ルーマニアで偽造旅券がバレて強制送還となり、18年ぶりに帰国。懲役20年で現在服役中。大道寺あや子、佐々木は海外放浪中だ。
実行犯はいずれも団塊の世代。獄中で、そして海外でなにを思う?(敬称略)