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【産経抄】10月19日
このニュースのトピックス:慰安婦問題
落ち着いたマルーン(栗(くり)色)の車体でおなじみの、といっても関西人以外はおなじみでないかもしれないが、京阪神の足となっている阪急電車が「優先座席」を8年半ぶりに復活させるという。残念ながらやむを得ない。
▼阪急が優先座席をなくしたのは、「全席が優先席」という理想からだった。21世紀にはお年寄りや妊婦さんが乗ってきたらさっと席を譲るという当たり前のマナーがきっと定着するだろう、という読みだったようだが、甘かった。
▼お年寄りが前に立っても狸(たぬき)寝入りするのはまだいい方で、若者たちが平気でぺちゃくちゃしゃべり続ける光景を何度見たことか。学校も会社もモラル低下に頭を悩ませているのに、電車内だけ例外とはいかない。せめて優先座席には若者を座らせないよう徹底させるしかない。
▼理想と現実のギャップに気づくのに鉄道会社は、8年以上かかったが、旧日本軍が中国に遺棄したとされる化学兵器処理事業の闇も予算措置から8年を経て明るみに出ようとしている。こちらもある政治家の日中友好を願う「理想」から出発した。
▼この政治家は、さきの大戦では日本が一方的に悪い侵略者だったと信じて疑わず、償いも足りないと感じているようだ。官房長官時代に慰安婦の強制連行を認めるような談話を出し、外相時代には遺棄化学兵器の処理費用を全額日本が出す取り決めを中国と交わした。
▼現実はどうだったか。既に683億円もの税金がどこかに消え、今後いくら中国や関係企業に吸い取られるかもわからない。こんなにも甘い蜜を悪い奴(やつ)らが放っておくはずがない。河野洋平さん、不透明で異常な税金の無駄遣いに道を開いた当時の指導者たちの責任を、小欄はあいまいにはしませんよ。