期せずして『ただ、君を愛してる』と同日公開になった。しかも主演は
上野樹里。ドラマ『のだめカンタービレ』の主役2人が映画で対決する
ことになったのは、実は期せずしてではなく、意図的に仕掛けられたもの
なんだろうか。最近の邦画好調を考えると、そんな邪推すらしてしまう。
ところが、映画としてはこっちのほうが数倍、いや、数百倍よくできている。
透明感、この映画にも共通する要素だろう。
しかし、透明は透明でも見た目でなく、流れている血流まで透明という感じか。
いきなり上野樹里が飛行機事故で亡くなったことが描かれ、物語は一気に
哀しみモードへ。そこから彼女と市原隼人との過去が回想されていく。
最初にヘヴィーな爆弾を落とされたんだから、当然、観客の頭には
彼女の死がつきまとうはずなんだが、これが不思議なもので、観ているうちに
だんだん哀しみモードが消え失せて、とっても前向きな気持ちになってくる。
最近の邦画は主人公が死ぬことで感動させようとする話が多いが、
これは真逆。それでいての透明感だからこれは相当な透明感だろう。
自主映画製作に打ち込む2人。
何となく心惹かれあうのに具体的な一歩を踏み出すことはない。
一言で表現するなれば、恋愛モラトリアム。
煮え切らないからイライラすることもあるんだが、これもリアルな恋愛だろう。
そして、彼らが打ち込んだ自主映画が劇中で非常に効果的に使われる。
撮影風景だけが描かれて全容が分からないようにしつつ、
それが最後にストーリーにピタッとハマるような構成。
しかも、8mmで撮った映像をまるまる大スクリーンにはめ込んで
それが映画自体にピタッとハマるような空気感。
思わず「うまいぃぃぃ」と膝を打ってしまった。
さらに特筆すべきはリアル・・・何がリアルって、2人を含めた出演者の
演技が言葉に表せないぐらいリアルなのである(相田翔子はピカイチ)
やらされてる感、演じている感がゼロ。もちろん演出方法によるところも
大きいんだろうが、この映画にはスタッフ・キャストの魂が入っている。
いや、入っていると信じたい。
プロデュースは岩井俊二。
岩井作品って好き嫌いが分かれると言われているが、断言する。
この作品は『LOVE LETTER』以来、10年に1本の傑作である!!!
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