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2007年10月19日

◎患者の暴力に対応策 ここにも「モンスター」が

 医療ミスが続いたことがきっかけとなり、ひとしきり患者や社会の病院をみる目が厳し くなったが、今はそれにかわって患者による医師や看護師らに対する暴言や暴力が全国的な問題になっている。

 当地でも七尾市の公立能登総合病院が医療従事者に対する暴力への対処法や守衛室への 通報手順などのマニュアルを作成し、各部署へ配布した。同様に対処の手引書が必要と考え、作成を進めている医療機関が他にも出てきたといわれる。

 日本の医療について、たとえば「待ち時間三時間、診療三分」などという批判が昔から ある。その上、米国式の市場原理を重視する改革が木に竹を接ぐように進んでいるのが近年だ。なぜ、こうなのか。それを正確に理解する人は少ないようだ。モンスターペアレントというが、モンスターは何も教育界だけでない。

 一口でいうなら、長い待ち時間・短い診療の問題の背景には、いわゆる国民皆保険で保 険料の多い少ないに関係なく、来た順に同じ診療を受ける仕組みの下で医師や看護師などの不足が解消されず、こうした現状についての説明不足もあり、これに加えて、忍耐を失う人々が増えてきたということがあるようだ。

 どれ一つとっても根本的な解決には時間がかかる。だから事態はさらに深刻化する可能 性があるとの認識を持ち、患者側のいらだちを和らげる工夫をしたり、ときには厳しくルールを守らせたり、あるいは警察へ連絡したりする対応が必要になるものと考えられる。

 もちろん、できればそうあってほしくはないのだが、現状は憂うべきことになっており 、日本看護協会などは昨年十一月、「保健医療福祉施設における暴力対策指針」をまとめ、ホームページに掲載して注意を呼び掛けている。

 石川、富山両県とも医療に関する苦情などを処理するために窓口を設けて相談に当たっ ている。が、患者側のための窓口であるとの性格のため、医療機関側からの相談は皆無という。病院などは問題が表面化するのを恐れることもあってか、個々ばらばらに対応しており、院内暴力の実態が分かりにくい現状だが、組織的な取り組みを進めるときにきたようである。

◎IMF指摘に同感 デフレ解消はまだまだ先

 国際通貨基金(IMF)が先ごろ発表した世界経済見通しを、政府や日銀関係者はどう 聞いただろうか。日本の金融政策の焦点は、追加利上げのタイミングをうかがうことではなく、デフレ対策と成長の持続にあると断じている。四年にわたる景気回復でもデフレは完全には解消されず、利上げは時期尚早という指摘は、地方経済の実相をよく知る私たちには、合点のいく話だ。

 北陸の金融機関は、貸し出しが伸びず、行き場のない資金を有価証券で運用する傾向が 強まっている。資金需要が伸びないのは、法人ができるだけ自己資金で投資を行い、余剰金を借入金の返済に充てているためで、これは典型的なデフレ経済下の動きといえる。個人消費が伸び悩んでいるのは、実質所得が増えぬうえに、地方の地価が下げ止まらないためである。資産の目減りが続けば、消費マインドが喚起されないのも当然だろう。

 石川県と富山県の信用金庫の預貸率は、この一年間で十三行中十一行が下げ、九行が五 割を下回った。預金は集まっても、適切な借り手が見つからず、有価証券などで資金を運用するしか手がないのである。高級マンションが飛ぶように売れ、大手企業がバブル期を超える利益を上げている首都圏などとは、事情がまったく違う。

 今年の住宅地の都道府県別価格指数をみても、東京を100とした指数で、石川県は二 〇〇二年の20・4が14・9に、富山県は16・0が10・8に落ち込んでいる。大阪や京都すら、東京と比較した指数は悪化しているのである。地方の資産デフレを止めなくては景気の力強い回復は望めないだろう。

 IMFの世界経済見通しは、日本の金利政策について、円は過小評価されており、いず れ引き上げざるを得ないとしながらも、今はその時期ではないと結論付けている。この指摘は、私たちがこれまで主張してきたことと、ほぼ同じである。

 IMFの指摘通り、「期待インフレ率が決定的に上昇し、市場のボラティリティ(変動 性)をめぐる懸念が後退したという明確なサイン」が出たときにはじめて、金利引き上げのタイミングを考えればよい。


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