特集「どうなる中国」

世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」

中国大学生の就活はキビシイ!
就職率6割 就職しても初任給は大幅ダウン

地域、学歴、業種で違う初任給の水準

 9月から新学期がスタートする中国では大学の授業は始まったばかりだが、大学4年生にとっては過酷な就職戦線の“始まり”でもある。四川省の省都・成都市で2010年の開業に向けて地下鉄1号線の建設を急ピッチで進めている「成都地下鉄有限責任公司」は、10月12日付で2008年大学卒業予定者を120人募集することを発表した。同公司は9月末に募集活動を行うことを主要大学に通知していたが、10月11日までに就職希望者から1800通もの履歴書を受領しており、今回の正式発表を経て応募者数はさらに膨れ上がるものと予想される。

中国の大学生 4割が就職先決まらず

 筆者は2006年5月22日付の本リポートで「景気が良くとも、『新卒失業者』100万人」という記事を掲載したが、中国の大学卒業生の就職戦線はその飛躍的な経済発展とは裏腹により深刻さを増しているのが実情である。2006年の大学卒業生413万人に関するサンプル調査によれば、就職決定者が60%に対して、未就職者が40%(すぐに就職したくない者:15%+就職先が見つからない者:25%)という結果であった。すなわち、約165万人(413万人×40%)が新卒失業者であり、これに2007年の大学卒業者495万人を加えた合計の660万人が2007年の就職戦線への参加者となった。

 2007年8月の週刊誌「北京市場報」によれば、北京では地方から求職のために上京した大学生向けの「求職ホテル」が出現し、男女で階を分け、部屋には空調、テレビなど各種電気器具を備え、宿泊費も非常に安いという。このホテルの本社は上海にあり、北京のみならず、広東省の深セン、陝西省の西安、遼寧省の瀋陽などに支店を開設しているという。同ホテルの北京支店である「北京故宮店」の店長によれば、同店のベッド数は120床で、最も安いのは8人部屋で1人1泊20元(約300円)、宿泊客にはインターネット利用サービス、求職や観光の情報提供も無料で行っているという。“就職するなら何が何でも大都会”という夢を実現すべく、地方から北京、上海、深センなどの大都会に出向いて求職活動を行う大学生たちの巨大な需要が、この種の「求職ホテル」に活況をもたらしている。

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このコラムについて

このコラムはニューヨーク、ロンドン、サンノゼ、香港、北京にある日経BP社の支局と協力しながら、米国や欧州はもちろんのこと、世界経済の成長点とも言えるブラジルやロシア、インド、中国のいわゆるBRICs、エネルギーや国際政治の鍵を握る中近東の情報を追っていきます。記者だけではなく、海外の主要都市で活躍しているエコノミスト、アナリストの方々にも「見て、聞いて、考えた」原稿を提供してもらいます。

筆者プロフィール

北村 豊(きたむら ゆたか)

北村 豊

住友商事総合研究所 中国専任シニアアナリスト
1949年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。住友商事入社後、アブダビ、ドバイ、北京、広州の駐在を経て、2004年より現職。中央大学政策文化総合研究所客員研究員。中国環境保護産業協会員、中国消防協会員

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