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【経済】今なぜ社会保障を試算? 増税論議の“封印”解除2007年10月19日 朝刊 内閣府が経済財政諮問会議に提示した年金・医療・介護の社会保障の給付(受け取り)と、保険料や税負担に関する三つの将来試算が波紋を広げている。高齢者への給付カットや増税が想定され、“痛み”が避けられないからだ。政府はなぜ試算を提示したのか−。 (川上義則) Q 試算の内容は。 A 一つ目の試算は、国・地方の二〇一一年度の財政状況を推計した。経済成長が低めで歳出削減が進まない場合、行政サービスの経費を借金なしで税収でまかなう「基礎的財政収支」の黒字化目標を達成するには、最大で六兆六千億円の増税が必要とした。この増税分を全額消費税で換算すると、税率は7・5%にはね上がる。 二つ目の試算は、今以上に財政再建を厳しく進めることを前提に二五年度における社会保障の給付と負担の関係を示した。この試算だと、社会保障制度を維持するだけなら増税が不要なケースでも、財政再建を徹底するため、どんなケースでも増税は避けられない。増税分全額を消費税でまかなう場合、税率は最低で8・3%、最高では17・4%も必要となる。 三つ目は、二五年度の高齢者一人当たりの給付額と現役世代一人当たりの負担額(税と保険料)の関係。現行制度のまま高齢者への給付を維持した場合、現役世代の負担は現在より三割増える。逆に現役世代の負担を現行のまま維持すると、給付は医療で二割強、介護で四割弱の削減が必要になる。 Q なぜこうなるの。 A 国・地方の長期債務見通しは〇七年度末で七百七十三兆円と財政事情は厳しい。二五年度には六十五歳以上の高齢者は現在より七百万人も増え、医療や介護の費用がよりかさむ。一方、二十−六十四歳の現役世代は九百万人も減る。 少子高齢化の影響を和らげるには、歳出削減が重要になる。歳出削減が進まず、歳出が増した場合は増税幅は当然大きくなる。もちろん日本経済がより成長した場合は税収が増え、増税幅は小さくなる。ただ高い成長率の達成は難しいとの声は強い。 Q なぜこの時期に試算を示したの。 A 政府は〇四年度の改正年金法で、〇九年度に基礎年金の国庫負担率を三分の一から二分の一に引き上げ、年金の安定化を図ることを決めていた。これには税金の引き上げが必要で、消費税が有力視される。国民に増税の必要性を訴える必要があった。 しかし、安倍政権では経済成長による税収増で財政健全化を目指す「上げ潮路線」がとられ、増税論議が封印されていた。福田政権に代わり、制約が解かれたことが試算を提示した背景にある。 一方、増税を前提とした試算ではという批判もある。町村信孝官房長官は「軽負担、高福祉は成り立たないという、当たり前のことを言っているだけ」とかわしている。
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