諏訪マタニティークリニック(諏訪郡下諏訪町)の根津八紘院長(65)は17日、日本産科婦人科学会に申請せずに2002年からこれまで、県内外の20−40代の未婚女性19人の卵子を凍結保存したと明らかにした。
同学会の倫理指針(会告)によると、卵子の凍結保存は夫がいることが前提。ただ、未婚女性でも白血病治療などで不妊になる恐れのある患者の卵子を治療前、凍結保存する臨床研究については、国内約130の民間不妊治療施設が加盟する団体が同学会に申請し、今年1月に容認されている。
根津院長によると、19人のうち7人は、放射線や抗がん剤などによるがん治療で生殖機能が失われたり低下したりする可能性がある。残り12人は病気ではなく、加齢で卵子が老化し、妊娠しにくくなったり、流産の可能性が高まることに備える目的。これらの女性たちはまだ結婚の予定がなく、今のうちに卵子を保存しておきたいなどと説明したという。
卵子の保存は、水分を抜いて保護液を注入し、急速凍結させる「ガラス化法」で行った。
根津院長は「がん治療を受けて排卵しなくなった女性や高齢のために不妊になった女性を多く診てきた。予防的に(卵子を)ストックした方がいいと考えた」と説明。学会に申請せずに卵子を保存した理由については「患者は緊急避難的に訪れる。学会の査定をいちいち待っていられない」としている。