【モスクワ杉尾直哉】ロシアのプーチン大統領の後継候補の一人とされるナルイシキン副首相は17日、来月初めの日本訪問を前に毎日新聞などと会見した。「日本はアジア太平洋地域におけるロシアの戦略的パートナーだ」と語り、ロシア極東開発などでの日露間の協力を訴えた。
平和条約締結問題が未解決のため、ロシアでは「日露両国は戦略的パートナーではない」との受け止め方が主流だが、副首相は、北方領土問題を経済関係の足かせにしたくないとの姿勢を示した。
プーチン大統領は、12年のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議をウラジオストクに誘致するなど、アジア重視の姿勢を強めている。日本重視の姿勢もロシアのアジア戦略の一環とみられる。
同副首相は「今年の日露貿易額は150億ドル(約1兆7700億円)を超える見込みだが、中露は400億ドル規模だ」と指摘、日露経済交流のさらなる発展を訴えた。日露の協力が期待できる分野として、(1)東シベリア・極東地域での交通などのインフラ整備(2)密漁防止による水産資源保護--を挙げた。
ロシアが建設中の「太平洋石油パイプライン」について、副首相は「日本の建設会社や専門家が参加する可能性を除外しない」と述べた。ただ「ロシアには資金が十分ある」と述べ、日本からの融資調達の可能性を否定した。
副首相は、来年3月の大統領選挙への出馬の可能性が取りざたされていることについて「ジャーナリストたちの作り話。私には(副首相として)政府で仕事を続ける以外に計画はない」と述べた。一方で、「プーチン大統領に別の職を命じられれば従う」と語り、今後の処遇は大統領の判断次第との考えを示した。
ナルイシキン副首相の日本訪問は今年7月に続き2回目。日本で開かれていた「ロシア文化フェスティバル2007」の閉会式に出席するほか、日本政府要人との会談を予定している。
毎日新聞 2007年10月17日 23時22分 (最終更新時間 10月18日 2時20分)