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リタリン:「うつ病」処方削除 依存患者救済を 「治療施設少ない」

 向精神薬「リタリン」の乱用問題で、厚生労働省が、うつ病への処方を認めない方針を決めたことで、処方する医師や薬局が登録制になるなど流通管理も徹底される。乱用には歯止めがかかるが、依存症に苦しむ患者や家族からは「薬の流通を絞っても、薬物依存専門の治療施設がほとんどない現状では、患者の救済につながらない」との批判が出ている。【精神医療取材班】

 「処方が厳しく制限されるのは大賛成。でも、今依存している人をどうするかが重要だ」。東京都中野区の男性(35)は指摘する。7年前にリタリンの服用を始めた。2年前からは、医療法違反の疑いで都などの立ち入り検査を受けた東京クリニック(新宿区)にも通院し、服用量が急増。多いときには1日20錠以上も飲んでいた。男性は会社を休職し、都内のデイケアに通うなどしたが、依存症は治らなかった。「治療の方法や内容に不満があった。専門の治療施設の少なさを痛感した」という。

 男性は今月初めから約2週間、数少ない薬物依存の専門治療施設の一つ「赤城高原ホスピタル」(群馬県渋川市)に入院し、リタリンからの離脱に成功した。男性は「国は供給源を断つだけでなく、私のような依存者を治療し、支援する体制をつくる必要がある」と訴える。

 うつ病への適用除外などを求め、厚労省に要望書を提出していた家族会の女性は「うつ病に使えなくなったことは大きな前進。企業側が、薬の流通を管理する仕組みを早急に確立することが次の課題だと思う」と話す。長男を自殺で失った名古屋市の小原幸子さん(55)は「こんな対策をとらなければ、医師や薬を管理できないというのが残念で仕方がない」と語り、「依存で苦しんでいる人をどうやって立ち直らせていくのか。問題は山積している」と話した。

毎日新聞 2007年10月18日 東京夕刊

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