政府は17日、インド洋での海上自衛隊の給油活動を継続するための「新テロ対策特別措置法案」を臨時閣議で決定し、国会に提出した。現行のテロ特措法は11月1日に期限が切れるが、それまでに新法が成立する見通しはなく、海自の補給艦が一時撤退を余儀なくされるのは確実な情勢だ。活動再開のためには新法の発効が必要だが、強引に成立を目指せば国会が混乱し、衆院解散・総選挙含みの展開となることから、福田康夫首相は難しいかじ取りを迫られる。
政府が現行法に代えて新法を出すことにしたのも、給油の一時中断は避けられないと判断したための窮余の策だった。
17日に開かれた衆院議院運営委員会の理事懇談会で、与党側は「18日にも本会議で法案の趣旨説明を行いたい」と申し出たが、野党側は「時期尚早」として拒否し、週内の審議入りには応じない構え。同法案の趣旨説明は23日以降の衆院本会議となる見通しだ。
民主党の鳩山由紀夫幹事長は記者団に「給油活動であれ何であれ、戦争に協力する法案には反対だ」と述べ、新法の成立阻止を目指す姿勢を強調した。
一方、町村信孝官房長官は17日の記者会見で「この国会の最重要法案であることは明らか。当然この国会で成立させる」と意欲を語ったが、国会会期は11月10日までで、新法成立のためには会期延長が必要だ。
大幅に延長した場合、年末の予算編成に影響が出ることが懸念される。一方で、延長しない場合や小幅延長にとどめた場合、「テロとの戦い」に対する政府の意欲を米国などから問われる事態も想定される。
また、参院の過半数を野党が握っているため、新法成立のためには法案が参院で否決された後、衆院の3分の2の賛成で再可決する必要がある。その場合、野党が「参院軽視」と反発するのは必至。参院で、福田首相に対する問責決議が成立し、衆院解散・総選挙の可能性も浮上する。
新テロ特措法案は、現行のテロ特措法から、捜索救助や避難民救援などの活動を削除し、給油・給水の「補給支援」に活動を限定。基本計画で規定されていた活動区域などを法案本体に取り込んでいるため、政府は「法案の賛否が国会承認」として、現行法にある国会承認の規定を削除した。法律の期限は1年間。【古本陽荘】
毎日新聞 2007年10月17日 23時19分 (最終更新時間 10月18日 9時50分)