◇8回断られたケースも--病院関係者「原因は医師不足」
◇処置困難/医師不在/専門外/満床
妊婦を救急搬送する際、病院に拒否されたケースが、04年から06年の3年間で74件に上ることが県消防防災課のまとめで分かった。いずれも母親や胎児に大きな影響はなかったが、8回断られ、9カ所目で受け入れられたり、通報から受け入れまで、2時間近くかかった例もあり、妊婦受難の実態が浮かび上がった。【塩崎崇】
まとめによると、あらかじめ搬送先が決まっている転院搬送を除く、産科への救急搬送件数は3年間で867件。うち8・5%に当たる74件が受け入れを拒否された。拒否回数は1回が51件、2回が10件、3、4回が各6件、8回が1件あり、拒否回数の合計は121回に達した。
119番通報から受け入れまで最も長くかかったのは112分。早朝、「下腹部痛」との通報があり、妊娠の兆候と見て、検査を求めたが、4病院で断られた。ようやく5病院目で検査を受け、妊娠と判明。だが、産科医がいないため、さらに県外の病院に転送した。
拒否回数が最多の8回のケースは、県外からの旅行者だったため、かかりつけ医に運べず、受け入れ先を探すのに手間取った。
拒否の理由で最も多かったのは「処置困難」が32回。次いで「医師不在」30回、「専門外」22回、「満床」9回--などとなっている。
受け入れ拒否について、産婦人科を持つ県内の総合病院関係者は「拒否するとすれば、原因は医師が足りないから」と断言する。県は6月から医師を医療機関にあっせんする「ドクターバンク」を開始したが、この病院関係者は「医師確保対策をもっと強化してほしい」と訴える。さらに「救急隊の説明を聞いて、リスクが高いと判断すれば断ることもある」と、妊婦側にすれば、やり切れない実情を明かす。
今回のまとめは、奈良県で妊婦の搬送先が決まらず死産した問題を受け、厚生労働省と消防庁が行った全国調査の一環。県内11消防本部が対象だが、05年は1本部、04年は2本部が「集計不能」としている。
毎日新聞 2007年10月18日