Gackt


雨の京都の街で番傘を持つGackt。風流な庭の中でたたずむGackt。…一見、アンバランスに思えるシチュエーションではあるが、やはりそこは絵になる男である。自然ながらもどこか優雅な空気を感じさせる存在感はさすがだ。そして、この京都というのはGacktがその昔に住んでいた地でもある。そんな京都についての思い出などを語ってもらいつつ、彼のキャラクターに迫ってみたのだが、そこには常にリラックスを求め続けているGacktの姿があった。


●今回の取材地に選んだ京都は、Gacktさんにゆかりのある地ということで…。Gackt:ゆかりなんてないですよ(笑)。
●いきなりこの企画の意味がなくなるじゃないですか(笑)。
Gackt:ハハハ。
●京都にはどれくらい住んでいたのですか。
Gackt:まあ、ぼちぼち。…悪質なファンも少数いるので、話しません。
●ああ、悪い人がいますからね。
Gackt:ええ。最近、そういう人が出てきたんですよ。インターネットでいろんな情報を流していたりしていて、ほんとイヤになりますよ。また、人を信じられなくなります。
●じゃあ、ちょっと話題を変えましょう。久々に京都に来て、懐かしかったりしますか。
Gackt:やっぱり懐かしいですよね。八坂神社…今、上がって来た通りなんて、よく来ていたし、僕、夜景が好きなんで、円山公園の上まで登ったりしましたよ。
●他に京都でどこか懐かしい所はありますか。
Gackt:やっぱり夜景ですね。
●夜景を見るのに一番好きな場所ってあります?
Gackt:ありますよ。ポンポン山。
●ポンポン山!?
Gackt:きっと、だれも分からないと思います。一応、地図にもちゃんと”ポンポン山“って載ってるんですけど、行き方が分かんないですよ(笑)。みんなよく将軍塚とかに行くじゃないですか。でも、将軍塚から見た夜景よりも、ポンポン山から見た夜景の方がより京都らしい。光のある所とない所と、名神(高速道路)と京都タワーが奇麗に見えるんですよね。
●すごくいい場所なのに、名前が”ポンポン山“なんですね(笑)。しかも行き方が分からないという。
Gackt:車が1台通れるか通れないかの道幅なのに、ちょっと間違ったら崖から落っこちるというような明らかに道幅をオーバーしている車で、よく行ってました。それも週の半分ぐらい行ってましたね。ちょっと何かあればすぐに行ってたし、休みの日には夜の11時か、12時ぐらいに行って、車を止めて、夜が明けるまで…車を止めた、その角度のままでボンネットの上に座って見れるんですよ。それがすごい好きで、ずっと見てるんです。
●そんな夜景を見ているときってどんな心情なんですか。
Gackt:”無“です。いろんな悩み事とかあるじゃないですか。夜景を見ながら頭の中ではいろんなことを考えるんですよ。でも、考えていると、どんどんとその物事のちっぽけさ? 景色はすごく広くて、車なんて光しか見えないんですよね。で、「何でこんなくだらないことを考えているんだろうな」って…何にもなくなるっていうか、すごくポジティブになれる。そうすると何も考えなくなって、ずっと景色を見ているだけ。ほとんど病的ですけどね(笑)。
●週の半分ぐらいそうやって夜景を見に行っていたのですか。
Gackt:週の半分は30分ぐらいちょっと見て帰る程度ですね。6時間も7時間もボーっとしているのは2週間や1カ月に一度ぐらいでした。だから、自分の大事な友達…それは男女関係なく、必ず見せますよ。初めて見たときに感動しましたからね。前にK:oziを連れて行ったんですけど、やっぱり「すごい!」って感動してましたよ。
●どんな気持ちのときに夜景を見に行っていたのですか。
Gackt:何かがあるから行くんじゃなくて、夜景を見ていると逆にいろいろ降りてくるんですよ。きっと純粋に夜景が好きなんですね。街なんてそんなに毎日毎日変わるわけないと思うでしょうけど、夜景を見ていると違うんですよ。全然、昨日見た夜景と違う。街が動いているんですよね。
●見ている自分の気持ちでも違ってくるでしょうしね。
Gackt:気持ちひとつで全然見方も変わりますよね。
●では、夜景以外にもどこか好きな場所はありますか。八坂神社とか…。
Gackt:ありますよ。八坂神社…基本的に僕、寺が好きなんですよ。きっと、気持ちが田舎者なんでしょうね(笑)。
●でも、寺って独特の空気がありますよね。
Gackt:そうですよね。高野へ行くまでの途中にすごい所があるんですよ。門があって、その門の中に入ると江戸時代なんですよ(笑)。別に太秦(東映映画村のある地)じゃないんですけど、ホントにその空間だけ別世界なんです。でも、たまに砂利道の上をベンツが走っているんですよ。それだけがすごく腹が立つんですけど。乗っているのは坊さんですからね。
●それは許せないですね。
Gackt:でしょ(笑)。でも、よくいろんな人と一緒にそこに行って、その中でくだらないことを話してましたよ。
●寺に行きたくなる動機も夜景を見に行きたくなるときと同じなんですか。
Gackt:落ち着きたいんだと思うんですよ。僕は基本的に寝そべるのが好きなんですね。境内だったら寝れるじゃないですか(笑)。横になったりとか。だから、公園も好きなんです。神社とか芝生があったら座って、横になってしゃべったりして、「ちょっと歩こうか」ってなったら歩けるでしょ? 「休もうか」ってなったら座れるでしょ? 意外とこれって単純なことなんですけど、東京じゃできないんですよ。座ろうと思ってもベンチがない。ベンチがあっても汚いし、必ずだれかが寝ている。新聞紙を敷いてね(笑)。
●そこに住んでいる人もいますからね(笑)。
Gackt:やっぱり住居を侵すことはできないですから(笑)。
●夜景にしろ、寺にしろ、リラックスできる場所を求めている感じですね。
Gackt:そうですね。だから、海辺や浜辺とかも好きです。
●撮影のときの和菓子屋さんの中庭はどうでしたか。
Gackt:ああいうところもいいですけど、基本的には人のいないところが好きなんですよ。どうしても人がいると殺気だっちゃうんで、警戒してしまうんですよね。後ろに回られると裏拳が出るかもしれない(笑)。
●ゴルゴ13じゃないんですから(笑)。
Gackt:ホントに大変なんですよ(笑)。
●京都はそういう意味では落ち着ける場所が多いですよね。
Gackt:多いですよ。北山の方もすごくいいし…北山にだれもいない寺があるんですよ。そこも好きだし…僕、市内をうろうろするってことはしないんですよ。夜中の京極とかは好きですけど。だれもいないし(笑)。だから、基本的には山の方が多い。ダメなんでしょうね。うちのメンバーはコンビニがないと落ち着かないタイプなんですけど、僕は全然そんなものは必要じゃなくて、人はいなくていいんです。買い出しも2週間に一回とかだから(笑)。
●今って忙しくて、そんな場所に行けないと思うのですが、そうすると都会生活の中でいらついたりしないんですか。
Gackt:東京に行ってからずっといらついてますよ。だから、東京に住み始めたときにストレスがたまって、Kamiに「夜景をくれ」って言ったんですよ。そしたらKamiが葛西臨海公園に連れてってくれたんですけど、僕が思ってる夜景というのは山の高い所に登って見たい夜景ですよね。違うんですよ。東京にはそういう所がないんですよ。で、箱根まで行ったらあったんですけど。
●じゃあ、今はなんとか東京の生活にも慣れたって感じですかね。
Gackt:いや、やっぱりイライラしますよ。だから、飲みに行くのも騒がしい所は好きじゃないんですよ。人がいない所がいいんです。さびれたバーとか、真っ暗な所とか。
●そういう所の方が落ち着く?
Gackt:落ち着くんですよ。宗教音楽が流れているようなところとか、線香のにおいのするところとか大好きです。フランスに行ったときもすごく良くて…何にもないんですよ。コンビニもないし(笑)。夜はすごい静かで、初めて行ったときに「ここは自分が住むところなんだ」と思いましたから。それはきっと求めているものが一緒なんですよね。フランスだからじゃなくて、京都だからでもないし、長野に行けば「長野いい」って思っちゃうだろうし。多分、択捉(えとろふ)島とかに行ったら「寒いけどいい」って思っちゃうんじゃないですかね。
●でも、人がいない方がいいとは思うものの、寂しく思ったりはしないんですか。
Gackt:寂しいけど…周りに人がいるということと、ざわざわしているということと、寂しくないっていうことは違うから。だって、街を歩いていると人といっぱいすれちがうけど、自分とは全く関わりのない人だからうるさいだけ。それに3人とか4人でもすごく心地いいときがあるし、何十人いても落ち着かないときは落ち着かないし。
●そんな生活の中でたまったストレスはどうやって解消しているのですか。東京では夜景が見れないわけでしょ?
Gackt:だから遠出して箱根に行ったりとか…最近は時間がなくてそういうこともできないんですけど、昼に仕事があって、次の仕事が夜の8時だったんで、時間が空いたから「箱根に行こう」って(笑)。そういうことをしちゃうんですよね。性格が暗いんですかね。
●それだけそんな場所を求めているんでしょうね。
Gackt:街を歩いていてリラックスできないんですよ。人が多いでしょ? で、すごく人のにおいがするじゃないですか。ダメなんですよ。ウッとかなる。

●どこかに行くばかりじゃなくて、自分の部屋をリラックスできるように工夫したりはしないんですか。
Gackt:結局、家にいてもやってることって仕事なんですよ。何かをしているんですよね。ピアノを弾いているか、本を読んでいるか、お酒を飲んでいるか、音楽を聴いているか。だから、やっぱり京都はいいところだと思います。小さいころ田舎にいたから…沖縄にいたころって何にもないんですよ。目の前は海で、周りは緑だったし、それが好きだったんです。
●そんな子供のころの体験が染み着いているみたいですね。
Gackt:多分。きっと思い出なんですよ。そういう中で落ち着いていた自分がいたから、ざわざわしているところが苦手だったりとかするんでしょうね。だって、イヤじゃないですか。家に帰ってカギを閉めないといけないとか、家を出るときは窓を閉めないといけないとかって。基本なのかもしれないけど、結局、何かしら他人に気を使っているでしょ? 音量を大きくしてはいけないとか、ゴミを出すのにも曜日が決まっているとか、細かいことが決められている。そうやってやっていかないといけないのかもしれないけど、もっと自然体でいたい。リラックスしたい。ずっとそう思っている。
●そんなリラックスできる時間がGacktさんの求めているものになるのですか。
Gackt:時間じゃなくて空気なんですよね、求めているものって。だから、家に友達が来ても、ずっと一緒にいたいっていうわけじゃないんですよ。その空気が欲しい。全然会話がなくてもいいんです。会話がなくても、一緒にいて違和感のない空気があれば、問題ないんですよ。結構、僕の家はそうですよ。友達が来てもしゃべんないですからね(笑)。みんな勝手なことしている。お酒飲んでいる人がいれば、本を読んでいる人もいるし、ゲームしている人もいて、僕は僕で勝手なことしているし。
●きっとくつろげるんでしょうね。
Gackt:暗いから(笑)。基本的に電気をつけないから、ロウソクしかついてないし。っていうかね、最近、何で自分が電気をつけないか分かったんです。暗いのも好きなんですけど、電気をつけるとヒューズが飛んじゃうんですよ。電気製品が多いんで(笑)。キーボードとかいっぱいあるんですけど、僕、つけっ放しなんですね。キーボードでも思い立ったらすぐ弾きたいんで。待つのがイヤなんですよ。電源入れた後、少し時間がかかるでしょ? あれがイヤなんで。だから、ロウソクの数はすごく多いですよ。燭台の数も。それとお香の数も多い。
●お香というのは、やっぱり寺が好きだからですか。
Gackt:日本モノだけじゃないですけどね。
●お香を焚(た)いてリラックスしていると?
Gackt:それもありますよ。子供のころ、おじいちゃんがお香を焚いていた所でリラックスしていたんですけど、その匂いがもう家に染み着いているわけですよ。で、聞こえるのが波の音だけ。そういう記憶があるんで、お香を焚くとリラックスできるんでしょうね。でも、楽屋でお香を焚くじゃないですか。みんな怒るんですよ。
●ああ、嫌いな人は嫌いですからね。
Gackt:「くさい!」とか「いらいらする」って言われる(笑)。
●京都の夜景や寺も含めて、結局はGacktさんが求めているリラックスできる空気というのは幼少のころの記憶によるものなんでしょうね。
Gackt:うん、かもしれない。結局、6歳か7歳のころからずっとピリピリしているから、自分の思い出として? 記憶として? すごく落ち着いて生活していたというのが6歳ぐらいまでの記憶しかないんですよ。
●今回の京都取材はくつろげました?
Gackt:う〜ん、ないですね。ごめんなさい、正直で(笑)。あっ、でも今日、夜景を見に行くんですよ。それは今日の取材があったから行けるわけだし、なかったらみんなと一緒に新大阪に連れて行かれていたんで感謝してますよ。
●ありがとうございます(笑)。
Gackt:今度から撮影は京都でお願いします(笑)。それで僕はリラックスできるんで。


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