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ミュージシャン、KERAとしてバンド“有頂天”やインディーズ・レーベル“ナゴム・レコード”を立ち上げたことでも知られるケラリーノ・サンドロヴィッチ。それだけに、ロック・バンドを結成する主人公たちの姿は、1980年代当時のリアリティにあふれている! |
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主人公の賢三は、親友のカワボン、タクオと共にクラスの連中を小バカにし、「自分はヤツらとは違う」と息巻く高校生。しかし何をすればいいのかさっぱり分からないのが現実 |
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学校一の人気者で同じクラスの美甘子に恋心を抱くが、想いを伝えるどころか話しかけることもできない賢三。隠し撮りが精一杯 |
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趣味の名画座巡りをしていた賢三は、ある日薄汚い映画館の中で偶然に美甘子を見かける。マニアックな映画談義で彼女とすっかり意気投合し、美甘子への想いをさらに深くする |
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【ケラリーノ・サンドロヴィッチ プロフィール】
1963年生まれ、東京都出身。1982年、テクノバンド・有頂天を結成し音楽活動をスタート。1983年にはインディーズ・レーベル“ナゴム・レコード”を設立し、筋肉少女帯、人生、たま、ばちかぶりらのレコード、CDをプロデュースする。1985年からは、犬山犬子(現・犬山イヌコ)、みのすけ、田口トモロヲらとともに“劇団健康”を旗揚げし、演劇活動も開始。劇団健康解散後の1993年に演劇ユニット“ナイロン100℃”を立ち上げ、以後ほぼ全公演を作・演出、98年には「フローズン・ビーチ」で岸田國士戯曲賞を受賞し、コメディからミュージカル、シリアス・プレイまで、幅広い作風を確立する。2003年「1980」で映画監督デビュー。映画「おいしい殺し方 A Delicious Way to Kill」(2006)やテレビ・ドラマ「時効警察」の監督・脚本を経て、長編映画3作目「グミ・チョコレート・パイン」に挑む。
STAFF&CAST 監督・脚本:ケラリーノ・サンドロヴィッチ 原作:大槻ケンヂ テーマ曲:電気グルーヴ 出演:石田卓也 黒川芽以 柄本佑 金井勇太 森岡龍 マギー 甲本雅裕 大森南朋(2007/東京テアトル)127分
■12月よりテアトル新宿他全国順次ロードショー

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1993年の発売以来、“青春のバイブル”として今なお熱狂的な支持を集める大槻ケンヂの小説「グミ・チョコレート・パイン」(角川文庫刊)。「オレたちは何かができるはずだ」と息巻きながらも悶々とした日々を送る主人公・賢三を中心とした高校生たちの、恋と友情を描いた青春小説が待望の映画化! この人気小説を映画化するのは、劇団ナイロン100℃を主宰し、映画「1980」(2003)や、ドラマ「時効警察」でも活躍するケラリーノ・サンドロヴィッチ。1980年代初頭にケラが立ち上げたインディーズ・レーベル“ナゴム・レコード”に所属する者として出会ったケラと大槻が、20数年という時を経て、本作で再会を果たした。これは、いやがうえにも期待が高まる! 今回は、ケラリーノ・サンドロヴィッチ監督のインタビューを先だしでお届け! |
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やった人間にもやれなかった人間にも等しく愛おしさを感じますよね (ケラリーノ・サンドロヴィッチ)

――「グミ・チョコレート・パイン」を映画化する話はいつ頃からスタートしたんですか?
「去年の夏ですね。ぼくは基本的に原作ものに対してあまり積極的じゃないんですが、大槻(ケンヂ)の原作で、大槻がぼくを監督に指名しているということで、考えてみようかと。やっぱり彼の指名は大きかったし、うれしかったですからね」
――それを受けて、どのような方向性で映画化しようと思いましたか?
「ぼくら、おじさんになってしまった人たちが、『青春っていいよね』という想いだけで映画を作るのもどうかと思ったんです。そりゃ、若さはいいよ(笑)。でも、人生は続いていくわけで、その部分も描いておきたかったんですね。一番難しかったのは、それを現代の視点から見せるというところで、たしかに冒頭で賢三たちにビターな将来が待っていることを見せるのは、すごくリスキーなことだったと思います。夢のある青春劇を分断してしまうわけですから。でも、より広い視点から見ることで、昔がもっと輝いて見える。そのことによって、荒んでしまった賢三たちの人生にも、何か一筋の光が射すと思ったんです」
――男子高校生が主人公の青春映画として、とても普遍的なものができあがったと思います。
「慣れないことだらけで、すごく照れました(笑)。これまで自分でオリジナルを書くときは、わりと女性メインのものが多かったんです。だから、たまには男子目線のものをやるのはおもしろいなと思ったんですね。ただ、東京生まれ東京育ちの人間はみんな照れ屋で、照れの隠し方がもはや一つのスタイルになっている。それを崩すのには勇気が必要でした。大槻の小説は恋愛のシーンに関してもストレートに捻ることなく描いているので、演出するときもみんなに『すごく照れ臭いだろうけどさ・・・』ってずっと言ってました、役者はまったく意識してないのに(笑)」
――賢三も、言ってみれば照れ臭さの塊みたいな存在ですよね。
「思い込みと照れが、物事を立ち行かなくさせてしまうんです。なぜ踏切で、美甘子にあそこまで言ってもらいながら、その先が言えないのか? 大人だったら成立しないですよね。でも、青春とはそういうものだっていうことだと思うんです」
――でも、90年代以降が舞台の青春映画だったら、こうはならなかったんじゃないですか?
「じりじりした感じが、あの頃はどんな立場の人間にもあったんじゃないですか。80年代に入り、現代にまで至るパーソナル化が起こり始めて、今回はその6年後の話ですけど、やっぱりバブルに向かっていくひとつの過程として、まだじりじり感はあったと思います。その感じがベースになってるんですよね。それ以降、何が変わったかというと、やっぱり当たって砕けることがなくなったというか、あらかじめ当たることを避けるようになったことがデカいと思います。あらかじめリサーチできるようになったから。あの頃は、ともかくやってみなきゃわからなかった。もちろん、やったらやったで失敗するかもしれないけど、やった人間にもやれなかった人間にも等しく愛おしさを感じますよね。やれなかった人間にも葛藤はあったわけだから。以前に、ナゴム・レコードについて『前向きになろうと思ってもなれない人たちの音楽』と書かれたことがあって、全面肯定はしないけど、確かにそういう側面もあったと思うんです。やれなくて悶々としてる人たちに向けて、シンパシーを示すサロンみたいな役割を果たしていて。人生観として、そこは一貫してると思います」
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不合理なものにしかない魅力ってやっぱりあると思うんですね(ケラリーノ・サンドロヴィッチ)

――賢三を演じた石田卓也さんは、本当はカッコいい俳優なのにカッコ悪く見えてしまうところがすごいと思いました。
「最初はぼくもこんなにカッコいい俳優じゃ絶対に賢三は務まらないと思ったんです。別のキャストにしようと。で、本人に『実はカッコいい役者がカッコ悪く演じてるだけだったら、観客として腹が立つと思わない?』って言ったら、彼もすごく同意してくれて。結果、彼は8kg太りましたからね。気を抜くとすぐ痩せるから、撮影中も毎食2食ずつ、できるだけ油っこいものを食べてました。相当大変だったと思うけど、でも楽しいからOKというような姿勢に、逆に支えられましたね」
――美甘子を演じた黒川芽以さんは、堂々とした演技に風格すら感じましたが。
「ほんとに器用なんですね。まだ若いんだから初々しさを残してくれ!っていうくらい堂々としてる(笑)。自分の引き出しを既にたくさん持っていて、それが今回は非常にいいバランスで出ていたと思います。黒川の“できる感じ”が賢三を焦らせるわけだから」
――「1980」でも、映画としては珍しく入念にリハーサルをされたと聞きましたが、今回もリハーサルはきっちりされたんですか?
「はい、短い期間でしたがやりました。フィクションが現実の世界に拮抗していくためには、作り込むということで闘うしかないと思うんです。特に若い役者は、中途半端な役者のシミュレートでやっていたら、すごくもったいない。ぼくはいつでも君たちの味方だよということを最初に伝えて、それからリハを行うことで、一体感も生まれるんです。映画はたいていそこを通過して行ってしまうので、そんなふうに信頼してもらえないまま、カメラが回ってしまうことだけは絶対避けたかった。『時効警察』のときもそうだったけど、やってるうちに結束感が高まっていくんですね」
――合理主義、効率主義の時代だからこそ、そのような一体感とともに作られた今作には掛け替えのなさを感じます。
「不合理なものを守っていきたいという気持ちは強くありますから。不合理なものにしかない魅力ってやっぱりあると思うんですね」 |
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「やった人間にもやれなかった人間にも等しく愛おしさを感じる」と監督が語ってくれた通り、悶々と自己嫌悪の日々を過ごす主人公を見つめる監督の目は実に愛おしさにあふれている。ダサくて甘酸っぱい彼らの青春に、1980年代の“あの時代”を思い出し、グッと胸熱くする青春映画の傑作。是非この冬の公開を楽しみにして欲しい。 |
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