中国共産党の第十七回党大会が、二十一日までの日程で始まった。胡錦濤国家主席(総書記)は活動報告で、急速な経済成長による格差拡大を是正して「調和社会」の実現を目指す「科学的発展観」を重要な指導方針と位置付けた。
共産党大会は五年に一回開催され、今後の中国の政治、経済の方向性を決める重要な場である。二期目を迎える胡氏としては政権を軌道に乗せて求心力を高めたいところだろう。そうした中で打ち出した科学的発展観は、人間本位を軸に経済発展の量的拡大だけでなく、生活の質や公平感を重視する考えとされる。
胡氏はこの五年間を振り返り、「総合国力と国際的地位や影響力が高まった」と自己評価する一方で、経済成長に伴う環境悪化や所得格差の拡大といった負の面を認めた。その上で、これらの社会矛盾を解決するためにも調和社会の構築は「歴史的任務だ」と強調し、科学的発展観を深く貫き徹底させなければならないと説いた。
経済発展の目標については「一人当たり国内総生産(GDP)を二〇二〇年までに二〇〇〇年の四倍とする」とした。従来の「全体で四倍」を改め、より個々の生活を重視する姿勢を示している。このほか、持続可能な発展につながる体制やメカニズムの構築、社会保障システムの整備なども挙げている。
中国の経済成長は著しい。〇三年以降二ケタの伸びが続く。〇八年の北京五輪、一〇年の上海万博など国の威信をかけた大規模な国際イベントも控え、活況を呈している。半面、都市と農村あるいは都市住民間での貧富の格差や、環境破壊、党幹部や官僚の不正・腐敗など多くの負の部分も生じさせた。国民の不満は募り、共産党の基盤を揺るがしかねない状況にまでなっている。
胡氏の方針は、こうした危機感を反映してのことだろう。率直に現実の深刻さを認めて江沢民前国家主席の下で強まった経済成長第一主義から方向転換を図ろうとの考えは評価できるが、「調和社会」の実現への具体的な道筋は見えてこない。胡氏は温家宝首相とともに、これまでも経済発展のもたらす不均衡の是正に取り組んできたが、思うような成果は上がっていない。
大国化している中国が、国内不安を拡大させて混乱を招くようなことになれば、日本など周辺諸国をはじめ国際社会も不安定になりかねない。胡氏が政治手腕を発揮し、調和社会を実現させるためにも日本は環境対策などで積極的にかかわっていくことが重要になろう。
あれだけひどいルール違反をしたのだから、厳しい処分も仕方ないだろう。日本ボクシングコミッション(JBC)は、先日の世界ボクシング評議会フライ級タイトル戦で反則行為を重ねた亀田大毅選手に、試合への出場停止を意味する一年間のライセンス停止処分を下した。
セコンドで違反行為を指示したとされる父親の史郎トレーナーらも、セコンドとして無期限の資格停止などの処分を受けた。
リング上の反則でボクサーが一年間も出場停止になるのは極めて異例だ。それほど亀田選手の行為はひどかった。チャンピオンの内藤大助選手の首を背後から腕で抱えたりバッティングを繰り返し、JBCは「いたずらに反則と見なされる行為を頻発した」と指摘した。
特に問題視されたのは、最終回の行為である。攻めあぐねた亀田選手が内藤選手を担ぎ上げ、リング上に放り投げる前代未聞の反則を犯した。亀田選手は大幅な減点を受けたが、その時点で失格負けしてもおかしくない愚行と批判された。
厳罰の理由についてJBCは「ボクシングを冒涜(ぼうとく)し、日本のボクシングにダメージを与えファンの信頼を損ねた」とした。その通りだろう。反則行為を指示した父親らの責任も重い。
兄弟三人がボクサーという亀田一家は、挑発的な言動で話題を集めてきた。今回は一家で内藤選手を「ゴキブリ」呼ばわりするなど傍若無人ぶりがエスカレートしていた。プロなら試合を盛り上げるため、多少の挑発はつきものだろうが、明らかに行き過ぎではないか。反則も含めた一連の行為を一家で猛省し、一から出直してもらいたい。
(2007年10月17日掲載)